2017 Fiscal Year Research-status Report
選挙制度と政治行動の理論と実証分析:「選挙公報」にみる候補者戦略
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16K03708
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
江口 匡太 中央大学, 商学部, 教授 (50302675)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 選挙 / 衆議院 / 小選挙区 / 中選挙区 / 東京都選挙区 / 戦略的行動 / 参議院 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画の2年目であり、構築したデータベースの分析と、それに関連する学術論文のサーベイを中心に行った。 具体的にはデータ分析では、研究代表者が構築した衆議院議員選挙と参議院議員選挙の東京都選挙区の選挙公報のデータを用いて計量分析を行った。昨年度までの大まかな分析の結果を踏まえて、1)候補者独自のアピールと2)地元選挙区への利益還元に焦点を絞ることにした。 この二つは、日本の衆議院議員選挙で採用された中選挙区制度によってもたらされると考えられている。中選挙区制度では同一政党(とりわけ自民党)から複数の候補者が立候補するため、当選するためには他政党の候補者よりも自分の所属政党の他候補者との差別化が求められたからである。その結果、政党名や政党の政策よりも、個人名や個人業績のアピールに力点が置かれたと言われている。この理論が正しいとすると、小選挙区制度へ移行したことにより、個人間競争より政党間競争へシフトしていくと想定されるので、候補者個人よりも所属政党を、地元の利益よりも国家全体の政策をアピールすることになる。 まだ確定した分析結果ではないが、データを計量分析すると、小選挙区制へ移行した結果、衆議院では個人名のアピールは減ることが観察され、一見理論の示唆する結果が得られそうである。しかし、選挙制度の変更がされていない参議院議員選挙をコントロール群として用いた差の差推定を行うと、むしろ逆の結果が観察されそうなことがわかってきた。そこで、当選回数や所属政党、選挙区などの違いも考慮しながら、詳しい分析を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の選挙制度や選挙結果に関する内外の研究をサーベイしながら、検定する理論仮説を絞ることができ、また、実際に計量分析に取り掛かることができた。候補者の固定効果や差の差推定を用いた日本の選挙に関する研究は少なく、有意義な成果が得られる期待を持てた。
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Strategy for Future Research Activity |
データの計量分析を進め学術論文としてまとめられるようにする。また、本研究の主な焦点は首都東京であるが、その他の地域も可能な限り視野に入れて分析したい。
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Causes of Carryover |
理由:研究計画の2年目の執行額は支給額に比べるとやや少ないが、支給総額の1割にも見たない額であり、概ね支給額を執行できたと考えている。研究の遂行は3年全体で行う予定であり、着実な研究遂行を優先したために多少の次年度使用額が生じた。
使用計画:書籍や物品の購入、出張旅費などに充てる予定である。
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