2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03709
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
上村 一樹 京都産業大学, 経済学部, 助教 (30708376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
駒村 康平 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (50296282)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 健康診断 / 受診勧奨 / 特定健診 / がん検診 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年2月に、三重県名張市に赴き、健康診断に関する政策をヒアリングした。ヒアリングのテーマは、健康診断の各種受診勧奨政策における実施費用、それらの効果に関する政策担当者の実感、今後行う予定の、自治体アンケートに関する意見聴取であった。それらの成果は、以下の通りである。 第一に、名張市では、健康診断の受診勧奨政策として、特定健診受診料の引き下げ、他の自治体よりも手厚い、がん検診無料クーポンの配布、まちの保健室を通じた口コミでの受診勧奨などを行っていた。名張市では、これら以外にも、さまざまな受診勧奨政策を同じタイミングで実施したということで、それぞれの政策がどの程度の効果を上げたのかは、識別が難しいとのことであった。 第二に、意見聴取の結果、自治体アンケートは、特定健診に関するパートと、がん検診に関するパートを分けた方が答えやすいとの回答を得た。理由は、特定健診は国保課、がん検診は健康増進課(いずれも、自治体によって名称が異なる場合あり)の管轄であるため、管轄ごとにアンケートを分けた方が答えやすい、ということであった。 最後に、名張市でのヒアリングの成果として、自治体アンケートを年度末~次年度4月に実施することは望ましくないことが分かった。その理由は、年度末は繁忙期であること、次年度4月は、部署の異動直後であり、担当者が十分な時間を取れない可能性が高いことである。したがって、当初、平成28年度中(平成29年2月~3月)に行う予定だった、自治体アンケートは、平成29年の5月に実施することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な研究計画は、(1)自治体ヒアリング、(2)自治体アンケートの2点であった。このうち、(1)自治体ヒアリングについては、三重県名張市にて実施済みである。その結果、以下のような成果があった。まず、健康診断の受診勧奨政策に関する費用対効果推定に必要な、政策実施費用に関する情報を入手した。次に、自治体アンケートの実施方法、詳細に関する示唆を得ることができた。また、自治体アンケートの実施時期について、年度末前後は避けた方が良い、との情報を得た。 自治体アンケートの実施時期については、当初予定していた、平成28年度中(平成29年度2月~3月)から、平成29年度(5月を予定)に多少ずれ込んだものの、平成28年度中の実施を想定して、必要な予算の見積もり、調査票の策定を行っていたため、平成29年度早々には、滞りなく実施できる体制が整っている。実施時期を年度末から5月にずらしたことで、回収率は上昇することが見込まれ、実施時期が2~3ヶ月遅れる以上の利点があると考えている。 平成29年度には、自治体アンケートに加え、インターネット調査を実施する予定であるが、調査票の策定はすでに最終段階に入っており、予算の見積もりに関しても、すでに開始している。そのため、自治体アンケートを回収後すぐに、平成29年6月を目処に実施できる手はずとなっている。 自治体アンケートの実施時期が多少ずれ込むことになったものの、前向きな理由による実施時期の変更であり、本研究は、これまでのところ、おおむね、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、残り2年度である。まず、平成29年度5月には、自治体アンケートを実施する予定である。自治体アンケートでは、各自治体の、特定健診およびがん検診の受診率、さらには受診勧奨政策について、過去10年分程度を対象に調査を行う。全ての市区町村に配布し、一定期間経過後、回答が得られない自治体に対しては、FAXでの再依頼を行う予定である。FAXでの再依頼でも回答が得られない場合は、状況に応じて、情報公開請求による情報収集も考えている。 自治体アンケートを回収後、インターネット調査を行う。全国に居住する、40歳~74歳の男女を対象とする予定である。40~74歳を対象とするのは、特定健診の対象年齢と合わせている。インターネット調査では、年齢、収入、健康状態といった個人属性を調査する予定である。 その後、平成29年度中に、(1)自治体アンケートと、各省庁で公表されている、自治体に関する統計を用いて、データセットを作成し、自治体単位の健診受診率の決定要因を分析し、さらに、(2)自治体アンケートと、インターネット調査を、居住市区町村に関する情報を元にマッチングし、データセットを作成して、個人単位での健診受診の決定要因を分析する。 上記(1)(2)の分析により、各種受診勧奨政策が、健診受診率をどの程度高めるのかが明らかになる。受診勧奨政策の費用については、平成28年度に、名張市へのヒアリングによって、情報収集済みであるため、費用対効果分析を行うことが可能となる。これらの研究成果は、適宜、学会報告、学術誌への投稿を行う予定である。 また、平成30年度には、研究成果を報告し、政策含意について確認するため、再度、自治体ヒアリングを行う予定でいる。ヒアリングの候補としては、先述の名張市以外にも、複数の自治体があがっている。
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Causes of Carryover |
平成28年度には、ヒアリングや打ち合わせでの旅費のみの支出となったが、最も大きな理由は、自治体アンケートを行わなかったことである。平成28年度に行う予定だった、自治体アンケートの実施を延期した理由であるが、自治体ヒアリング等の結果によって、年度末のアンケート配布は望ましくないことが明らかになったためである。具体的には、2~3月の年度末、および、年度初めの4月には、年度末の各種処理、部署の異動等が行われるため、政策担当者にはアンケートに答える余裕が無いと判断した。 図書をはじめとした物品購入を行わなかったが、これは、自治体ヒアリング等の結果、自治体アンケートの回収率が当初の想定より低くなる可能性が出てきたため、自治体アンケート配布後のFAXによる再度の回答依頼、あるいはその後の情報公開請求のための費用を確保することを目的としたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額分の多くは、自治体アンケートに費やされる予定である。現在、印刷業者とのやり取りの最中であるが、自治体アンケートの実施には、50~60万円程度が見込まれる。料金別納郵便を利用することによって、回収した分の料金のみを支払う形を取るなどして、費用を抑える予定だが、それでも、上記程度の金額はかかる予定である。
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