2020 Fiscal Year Research-status Report
労働市場、家族の変容と多様な貧困:その要因、帰結と貧困対策
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16K03712
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上田 貴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00264581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名方 佳寿子 摂南大学, 経済学部, 准教授 (70611044)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 労働経済学 / 貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、厚生労働省「国民生活基礎調査」、総務省「全国消費実態調査」及び「就業構造基本調査」個票データによる計量分析結果をまとめ、報告論文としての執筆を進めた。 第二に、犯罪の経済学の文献レビューとともに、法務省「矯正統計」「少年矯正統計」個票データによる計量分析を実施、計量分析結果を報告論文として執筆した。「矯正統計」については、刑務所収容者について経済関連状況と犯罪との関連の検証を行い、高校を卒業していない、住居不定である、無職であることのいずれについても、刑期や再犯のいずれか、または両方に関連があることが示された。「犯罪の経済学」先行研究との類似点として、犯罪類型による差異が確認され、教育水準を含む経済関連状況は財産犯とは有意な関連があるが、粗暴犯との関連は弱い傾向にあることが検証された。また、若い世代には粗暴犯が多い傾向にあることも類似となっている。「少年矯正統計」では少年鑑別所収容者を対象に、犯罪と経済的要因の関連を検証した。計量分析結果から、入所回数が多くなる要因として、生活程度が貧困である、虐待された経験がある、保護者が実父母そろっていない場合が示唆された。少年院送致の審判についても生活程度が貧困であることが関連していることが示唆された。 第三に、新型コロナウィルス感染症拡大による影響から貧困層への影響の研究を追加的な研究課題として研究開始した。感染症拡大の所得格差や貧困層への影響の国内外の関連研究の調査を行うとともに、次の2種類のデータにより日本国内の状況の分析を実施した。①貧困研究会の有志メンバーによる分析プロジェクトとしての、市民団体等が実施する「コロナなんでも相談会」電話相談記録票による計量分析。②内閣府によるウェブ調査「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」個票データによる計量分析。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予定していた政府統計個票データによる分析をほぼ終了している。なお、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、研究対象である貧困層にも経済的影響が拡大していることから、当初の予定に追加して国内外の関連研究の調査と追加的研究を実施中である。このため、研究期間を1年間、延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、新型コロナウィルス感染症拡大による子どもの教育・学力への影響を研究する目的で、子どものいる世帯を対象とした独自のウェブ調査を実施する計画中である。今般の感染症拡大特有の事情として、政府の支援策、学校の休校とオンライン授業、家庭の経済状況の変化(失業・休業・収入の減少など)、親の働き方の変化(テレワーク、時差出勤、など)などがあり、これらが子どもの教育にどのような影響を与えているのか、研究を実施する計画である。ウェブ調査については、調査会社に調査を委託、調査会社のモニター会員による調査とする計画である。 第二に、貧困研究会の有志メンバーによる分析プロジェクトとしての、市民団体等が実施する「コロナなんでも相談会」電話相談記録票による計量分析結果を報告論文としてまとめ、雑誌「貧困研究」に掲載を予定している。 第三に、本研究課題で遂行してきた政府統計個票データ等による分析結果全般を論文としてまとめ、学術研究書としての公刊を目指して準備を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で国内外の多くの学会大会がオンライン開催となり、出張旅費の未使用分として次年度使用額が生じた。2021年度についてもしばらくはオンライン開催が継続する見込みであることと、感染症拡大の影響についてウェブ調査を実施する方向へ計画を修正したため、2020年度での本研究課題の終了を1年間延長、2021年度にウェブ調査を実施する計画である。
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