2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03715
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
黒田 祥子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50447588)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 長時間労働 / メンタルヘルス / 職場環境 / 健康 / ワークライフバランス / 労働生産性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる28年度は、主に2つの観点から研究を実施し、論文として公表した。第一は、職場における人間関係が労働者のメンタルヘルスに与える影響について検証した。これまでの経済学の研究では、上司と部下との関係性に着目した研究は意外なことに必ずしも多くの蓄積がなされてこなかった。また、経済学の研究では職場のメンタルヘルスに関する研究も非常に少ない。そこで本稿は、蓄積の少ない2つのテーマを併せて検証し、上司の良し悪し(部下とのコミュニケーションの取り方や仕事の遂行能力等)が、部下のメンタルヘルスや生産性にどのような影響を及ぼしているかを検証した。同一個人を複数年にわたり追跡調査したデータを分析した結果、性格特性や元々のメンタルのタフさといった個々人に固有の要因や、労働時間や仕事の負荷といった業務に関連する情報を統計的にコントロールしたとしても、悪い上司の下で働いている部下のメンタルヘルスは、良い上司の下で働いている部下のメンタルヘルスに比べて、統計的に見て有意に悪い傾向にあることが明らかとなった。第二は、長時間労働が健康と労働生産性にもたらす影響に関する展望論文の執筆である。この論文では、国内外で少しずつ蓄積されてきている知見をサーベイし、長時間労働はメンタルヘルスの悪化に統計的に有意な影響を与えていることを示したほか、長時間労働は健康を毀損し、集中力を低下させることなどを通じて限界生産性を低下させること、したがって健康の確保のための長時間労働の是正と生産性の向上はトレードオフの関係にはなく、補完的な関係にあること等を指摘した。そのうえで、今後の労働時間規制の方向性について政策提言を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、初年度の結果を踏まえて、さらに深堀した検証を行う。また、これらの研究結果を国内外での研究会や学会等で報告をすることを通じてより完成度の高い研究を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度は分析に集中して、初期段階の研究成果を得ることに特化することとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降は、初年度に得られた分析結果を海外の主要学会で報告することを計画している。そのため渡航費として初年度分を2年目以降に繰り越すこととした。
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