2019 Fiscal Year Research-status Report
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16K03721
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
八塩 裕之 京都産業大学, 経済学部, 教授 (30460661)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 個票データ / 中小法人オーナー / 法人税 / 所得税 / 節税 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年に財務省の財務総合政策研究所から2回目の個票データの目的外利用申請(約20年間分の法人企業統計年報)を行い、これまでの研究に引き続いて中小法人の節税行動(インカム・シフティング)に関する分析を行った。研究成果は公益財団法人日本証券経済研究所が主宰する研究会(証券税制研究会)で報告し、その後、同研究会の報告書の一章として論文にまとめた。報告書は書籍化される予定であるが、現在、校正中であり、近日中に公開・発刊される予定である。 論文では、中小法人オーナーが、法人の企業活動で稼いだ所得を法人の所得とオーナー自身の給与に分割する行動に税制がどのような影響を与えるか、という観点で計量分析を行った。とくに近年、毎年の社会保険料引上げによってオーナーの給与に対する実質的な所得税率(保険料率を含む)が上昇する一方、2009年に中小法人向けの法人税率(軽減税率)が引き下げられて、法人の所得に対する税率が引下げられたため、オーナーは企業活動で稼いだ所得をオーナー自身の給与で受け取るのではなく、法人に留保することで節税できるようになった。論文ではこうした近年の税制の状況を示したうえで、税制がオーナーの行動に実際に影響を与えていると考えられることを示した。海外でも近年、法人税率の相次ぐ引き下げが中小企業オーナーの節税を誘発していることが報告されているが、日本でも同様の問題が起きている可能性があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究としての成果はでており、研究が極端に遅れているということはない。ただ、さらにそれを改善させたうえで、投稿論文にまとめる必要があり、その作業がやや遅れている。また、その関係で予定していた海外出張を取りやめた。そこで、その作業を行うために今回、研究期間を一年間延長することとした。海外出張も延長期間に実施する予定である(ただし、新型コロナウイルス蔓延の影響などで出張ができない可能性が残ることを付記する)。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの影響もあるが、可能であれば財務省財務総合政策研究所に対し三回目の個票データの目的外利用申請を行い、計量分析の改善を図りたい。そのうえで研究成果を学術論文にとりまとめて、雑誌に投稿するなどしていく予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度は毎年、秋に米国で開催が予定される全米税制学会(National Tax Association)への参加を考えていたが、研究の進捗状況を踏まえて参加を見送った。今年度は参加したいと考えており、そのための渡航費や宿泊費、参加費が必要である。ただし、新型コロナの問題で海外渡航が中止になる可能性もある点は付記しておく。その他、研究に必要な書籍購入や英文校正などに費用を充てる予定である。
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