2022 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of Japan's Small and Medium Enterprise Tax System Using Corporate Data
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16K03721
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
八塩 裕之 京都産業大学, 経済学部, 教授 (30460661)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小規模法人 / 個票データ / 法人税 / 所得税 / 節税 |
Outline of Annual Research Achievements |
財務省財務総合政策研究所から取り寄せた22年間の「法人企業統計年次調査」の個票を用いて、資本金1000万円未満の法人を対象にその節税実態の一端を明らかにすることを試みた。法人企業統計の大きな欠点は、いわゆる税務統計ではなく会計上の財務データであることであるが、中小法人の場合は税務と会計の乖離は一般に大きくないとされ、このデータを用いて分析を行った。 分析でとくに注目したのは、中小法人の課税所得800万円以上に適用される法人税本則税率の近年における断続的な引下げである。これにより、中小法人が直面する(本則税率で計算した)法人実効税率は40%超から34%程度に引下げられた。一方で、給与に適用される所得税率(社会保険料を含む)は、多くのケースで近年の保険料率引上げによって34%を明確に上回っており、(本則税率ベースの)法人実効税率と所得税率の逆転が生じた。こうした近年の税制改正により、オーナー経営が多い小規模法人の中には、オーナー経営者が自分の法人から受け取る給与を減らして法人に800万円以上の多額の法人留保を溜め込む節税誘因を持った可能性がある。そこで、実際にそうした実態がデータから観察されるかどうかを計量手法で分析した。 分析結果を論文にまとめ、国内の査読付き雑誌に投稿した。その後、査読者から貴重なコメントをいただけたため、それを踏まえて論文の改訂を行い、再度投稿を行った。審査の結果はまだ出ていず、結果判明は2023年度に持ち越された。
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