2016 Fiscal Year Research-status Report
労働者の異質性によって生じる富と所得の不平等に関するマクロ動学分析
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16K03724
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
大野 隆 同志社大学, 経済学部, 教授 (40388806)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生産性の異質性 / 有効需要 / 資産格差 / 給与格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の本研究では、企業の参入退出を明示した基本モデル(Ohno(2013))に、労働者の異質性(生産性の違い)による給与格差、そしてそれによって生じる保有資産の非対称性を考察した。労働のみをする労働者とともに、資産を保有し、利子所得も得る労働者と、企業経営をし、企業家利得も得る3グループを明示化した。その上で、能力の差によって、企業経営の 際に発揮される生産性が高い場合もあれば低い場合もあると想定した異質性を導入し、階級を内生的に導出するようなモデルを構築し、資産分布の多様性を考察した。その結果、資産総額は初期の大きさから変化しないことが明らかとなった。しかし、利子所得者の資産は均一化するが、企業経営者の資産は均一化せず、生産性に応じて大きくなることがあきらかとなった。このように生産性格差に起因する資産格差の歪みが明らかとなり、研究の目的の第一段階は達成されたということができる。 本研究をベースに、「労働者の異質性によって生じる富と所得の不平等に関するマクロ動学分析」を執筆し、経済理論学会第64回大会にて報告した。また、本論文は、『立命館経済学』65巻第6号に掲載された。 また、本研究の関係では、他に以下の業績がある。 中嶋哲也(2015)『経済発展と格差-簡単な家計モデルによる検討-』の書評を執筆した。 第21回進化経済学会にて「Cash constraint In the Harrodian model 」を報告した。 The 6th Summer School on Analytical Political Economyを運営した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外での学会報告はできなかったが、基本的な論文の作成は予定通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を更に勧め、生産性格差に起因する給与格差と資産格差に関する研究を行う。特に政策的影響を考察する。また、学会報告を積極的に行うとともに査読付き雑誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
海外での学会報告に関して、授業・学内校務との兼ね合いで難しくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は積極的に学会報告を行い、本研究に関して多様な意見を得られるようにする。
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Research Products
(5 results)