2021 Fiscal Year Research-status Report
労働者の異質性によって生じる富と所得の不平等に関するマクロ動学分析
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16K03724
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
大野 隆 同志社大学, 経済学部, 教授 (40388806)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハロッドモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、企業の生産性格差という異質性が資産格差や所得格差に与える影響、とともに、マクロの安定性に与える影響を考察することを目的とした研究である。今年度は、 昨年度に考察したハロッドモデルにBhaduri-Marglin型投資関数を入れ込み、企業の投資行動をより現実的に設定した論文"Capital-labor conflict in the Harrodian model"(Evolutionary and Institutional Economics Reviewに掲載)の均衡をより詳細に分析した。その結果、均衡の存在条件について、より詳しい条件が必要であることが導出された。すなわち、本論文は、2022年3月に「経済学論業」に掲載された。これら一連の研究は、不安定なハロッドモデルの安定化の条件を明らかにしている。その結果、産業予備軍効果が弱すぎても不安定となるが、強すぎても不安定となることが明らかとなった。この研究によって、原理的な不安定な資本主義経済であったとしても、産業予備軍効果が一定の大きさであるならば、経済が安定化することが明らかとなった。言い換えれば、異質な投資関数の集合体として、ハロッドモデルを考えるならば、経済の主体の異質性を考慮した企業行動をハロッドモデルにて考察を行ったということができる。次に、生産性格差を、二部門経済として捉え直し、均衡分析をおこなった。また、労使交渉のコンフリクトが、参入退出条件に与える影響を考察し、インフレ率の変化によって、産業の独占度に与える影響について考察を行っている。これらの研究は、次年度中に、生産性格差を考慮した研究に発展させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、研究会での報告、学会での報告ができなかった。 特に、経済理論学会にて報告予定であったが、オンライン学会になったため、研究報告の枠が少なく、研究報告ができなかった。 また、企業の異質性の導入を明示的に行うのが困難であるため、昨年度より、2グループに分けた、単純な異質性を導入し、マクロ経済における資産格差および不安定性について考察を行っている。特にマクロ的に、ハロッドモデルを用いて、2グループの異質性を考慮した考察を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
企業の異質性の導入を明示的に行うのが困難であるため、単純な異質性を導入し、マクロ経済における資産格差および不安定性について考察を行う予定である。特に、ハロッドモデルを用いて、2グループの異質性を考慮した考察を行う予定である。また、労使交渉のコンフリクトが、参入退出条件に与える影響を考察し、インフレ率の変化によって、産業の独占度に与える影響について考察を行っている。これらの研究は、次年度中に、生産性格差を考慮した研究に発展させる可能性を考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスのため、学会報告や研究会ができなかった。そのために、支出額が低下した。使用計画としては、本科研の初年時に購入したノートパソコンのバッテリーが機能しなくなりつつあるので、新しいノートパソコンを購入する予定である。また、簡易な研究会を行うのと、英文校正に主に使う予定である。
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Research Products
(1 results)