2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03726
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
玉井 寿樹 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (00456584)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公共財 / 不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、過大な政府債務の存在が金融市場を通じて、経済を不安定化させている。政府債務の増大に伴う財政の維持可能性への疑念は将来に対する不確実性を増大させており、政府が様々な公共サービスを今後も安定的に供給できるか否かについての議論も広がっている。本研究では、こうした状況を踏まえ、現行の財政制度、金融市場を想定し、不確実性の下での公共財の供給について、社会的に望ましい政策ルールの導出及びその政策実行判断の基礎資料を提供することを目的としている。平成28年度は経済の現状調査と先行研究の整理を中心として、次年度以降の政策分析に必要となる基本的な理論モデルの構築に注力した。その結果として、"Dynamic Provision of Public Goods Under Uncertainty"を基本モデルとして完成させた。同モデルは経済環境に対して所得の不確実性を導入し、市場参加者が将来予測をしながら公共財を自発的に供給する枠組みを提供している。現時点では、公共財供給の基本的部分を描写したのみであるが、次年度以降に金融側面、財政制度などを明示的に導入していくことで、現実経済分析に資することが期待できる。また、財政制度に関連した研究から、上記基本モデルを簡略化し現実の財政制度を取り入れた"Public Investment and Golden Rule of Public Finance in an Overlapping Generations Model"を研究論文として公表した。そこでは、寿命が不確実性を伴うものとして取り扱われており、高齢化と財政の分析を可能にする枠組みを提示し、高齢化が財政赤字増大に寄与するものの、それが必ずしも成長を阻害しないことを示している。これらは、学術分野での貢献のみならず現実経済への政策的示唆に富んだ研究成果であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画では、金融市場における現実的なリスク想定、財政制度及び理論・実証研究のサーベイをしていくことで、理論分析の土台を固ることを予定していた。その成果として、"Dynamic Provision of Public Goods Under Uncertainty"を基本モデルとして完成させた。より一般性の高い枠組みへと発展させる必要はあるが、平成29年度の計画の一部を前倒したものであり、その意味でも計画は順調に進んでいると評価できる。また、追加的な成果として"Public Investment and Golden Rule of Public Finance in an Overlapping Generations Model"を完成させており、次年度以降の研究計画の円滑な遂行が期待される状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては、平成28年度の研究計画を発展させ、当該期間にサーベイした実験・実証研究も踏まえた理論モデルを完成させ、応用モデルを使った分析及び数値解析へとつなげる基礎を確立していくことを予定している。具体的には、平成28年度で得られた基本モデル、"Dynamic Provision of Public Goods Under Uncertainty"を現実経済の情勢に適合した拡張・応用モデルへと拡張し、政策的知見を導くことを企図している。
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Causes of Carryover |
平成28年度中に、リオデジャネイロ(ブラジル)で開催されるAssociation for Public Economic Theory(APET; 公共経済理論学会)の国際会議への参加を予定していたが、現地の情勢不安(ジカ熱、治安悪化)を勘案し渡航を中止したため、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度中に、パリ(フランス)で開催されるAssociation for Public Economic Theoryの国際会議への参加・研究成果報告への支出に充当する予定である。
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