2016 Fiscal Year Research-status Report
医療費助成制度の違いは子どもの健康格差に影響するか
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16K03729
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
盛一 享徳 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 政策科学研究部, 上級研究員 (50374418)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 健康格差 / 小児医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療費助成の実体調査については、全国市区町村における乳幼児医療費助成・こども医療費助成制度の実情を調査し、都道府県の半数以上における調査を平成28年3月末で終了した。自治体における当該助成制度は頻繁に修正が加わっていることが明らかとなったため、基準日を設けての比較検討が必要であることがわかった。 政府統計からの指標抽出については、過去115年分の人口動態統計データから、健康についての指標の一つである5歳未満死亡における都道府県の格差をTheil indexを用いて評価した。それにより戦前は第2次大戦前までは、横ばいか緩やかな格差低下傾向であったが、戦後急減期に増大し、1960年前半をピークとして、その後急減期に是正されていることが分かった。一方で1990年代に最も格差が縮小していたが、2000年代以降少しずつ上昇傾向にあることが分かった。 小児慢性特定疾病登録データからの指標抽出については、平成23~25年データを用いて、既に発症頻度や登録状況について分析が終了している糖尿病1型を基準として、先天性心疾患や慢性腎疾患について、都道府県毎の登録格差を評価することにより、相対的な登録状況の分析を行った。慢性心疾患については、重症度の高い疾患については、かなり都道府県毎の登録の格差が小さいことが分かった。一方で発症頻度が極めて低い場合には、格差指標の結果の解釈が難しくなることが分かった。慢性腎疾患については、IgA腎症では格差が少なく、一方でネフローゼ症候群は15歳以降で登録にばらつきが生じていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医療費助成の実体調査については、全国都道府県市区町村の乳幼児医療費助成・子ども医療費助成制度の実体調査については、半数以上の都道府県について調査を進めることが出来ている。政府統計からの指標抽出については、過去115年分の人口動態統計データから、5歳未満死亡について都道府県間の格差を分析し結果を論文化した(現在出版待ち)。 小児慢性特定疾病登録データからの指標抽出については、慢性心疾患について分析を行い、第52回日本小児循環器学会にて分析結果の発表を行った。以上初年度の計画については、作業量が多く進捗に困難が予想されたが、概ね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
医療費助成の実体調査については、未調査の自治体について引き続き調査を進めるとともに、全自治体の情報収集が終了後、分析に移る予定。人口動態統計データを用いて、新生児死亡について検討を行う。小児慢性特定疾病登録データについては、慢性腎疾患等の他の疾患について分析を行うとともに論文化に向けて準備を進める。日本版診断群分類データについては、データ提供元の事情を勘案し、可能な範囲内で研究を進めることとする。
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Causes of Carryover |
初年度の助成金交付時期の関係で、研究助手の雇用時期を1年遅らせたこと、初年度の情報収集に時間を要したため、学会発表等は翌年度に延期し、論文作成を初年度に行うことを優先したことから、当初予定よりも支出が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度見合わせた研究助手の雇用を予定し、未完了分の情報収集を遂行すること、及び情報の分析を本格的に開始することを予定している。また得られた知見の学会発表も積極的に行う。
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Research Products
(2 results)