2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K03732
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
丸茂 幸平 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (90596959)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エルミート多項式系 / 同時分布関数の近似 / 条件付分布関数の近似 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的のひとつは,電力消費量で条件付けをした電力取引価格の分布を求めることである.(電力以外の)資本市場を対象とした研究では,価格の変化率が正規分布に従うことを仮定し,多変量の正規分布を用いることで条件付の価格分布を導出することが一般的である.しかし,電力取引実績データを調べると,1.電力取引価格やその変化率の分布は正規分布と大きく異なること,2.場合によっては負の価格が存在すること,など資本市場との相違点が明らかになった. こうした相違点には,保持することができない,という電力の特性が影響していると考えられる.たとえば,クイーンズランド大(オーストラリア)のR. Wolff教授らと市場関係者に調査をしたところ,負の価格については,使用する以上に作りすぎた電力を処分するための費用が無視し得ないことが主な原因であることが判明した.過剰に生産した分を採算の取れるコストで保持し,不足時に売却できればこのような負の価格は顕著にならない可能性がある. こうした知見は,電力市場を正規分布を用いて近似することが不適当であることが示唆するものである.このことのリスク管理を行う上での問題点は,多変量正規分布以外に扱いの容易な多変量の分布が事実上存在しないことである.本研究では,エルミート多項式系を用いて市場で観察される価格分布を近似する方法を開発する方向に焦点を絞った.その上で,エルミート多項式系が市場で観察される同時分布を近似できることを示し,また,そこから Value at Risk や期待ショートフォールといったリスク指標が導出できることを示した. その一方で,多項式系を用いたことによる弊害として,負の確率密度が生じてしまう.本研究で提案する方法が,少なくとも漸近的には非負の確率密度を与えることを示す必要が認識された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展しているものの,上述したように,密度関数を近似した関数の非負性について当初想定していたよりも慎重に検討する必要が認識されたため,これに伴う作業が追加的に必要となった.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の提案する確率密度関数を近似する関数は,有限の次数では負の値を与えることがあるが,少なくとも漸近的に非負であることが見込まれる.今後は,数学的に漸近的な非負性の証明を進めていく方針.
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Causes of Carryover |
豪州への出張期間が当初想定していたよりも短くなったことと,当初予定していたPCの新規購入を見合わせたことによる.
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Research Products
(2 results)