2017 Fiscal Year Research-status Report
ドル化経済における企業の資本構成:カンボジア大規模アンケート調査の分析
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16K03737
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
奥田 英信 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00233461)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 企業金融 / 資本構成 / ドル化 / 銀行 / マイクロ・ファイナンス / 経営効率性 / カンボジア |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) カンボジア現地調査:2017年9月3日から9月9日まで、プノンペン、シェムリアップ、バッタンバン、パイリンで現地調査を行い、カンボジアの中央銀行、金融機関、銀行協会、調査会社、AMROなど国際機関の実務者と面談を行った。また、オブザーバーとして参加しているNBC-JICA共同調査にも同行して、アンケート先の現地企業と家計の金融活動についても聞き取り調査を行った。現地調査では、国内での計量分析作業の結果に基づいて、カンボジアの企業資金調達・投資行動・販売活動に関する当方の見解の確認を行うとともに、これまでの分析の不明点について先方と意見交換を行うことができた。一連の面談によって、データ解析と計量分析の改善のために有効な情報を得ることができた。 (2)分析結果の発表:上記の(1)を踏まえて、奥田英信・相場大樹「ドル化経済における企業の資金調達行動:カンボジア大規模アンケート調査による分析」を『アジア研究』に投稿し、同論文は審査と改訂を経て受理され同誌第64巻第2号に掲載された。また、Okuda and Aiba "Determinants of the Capital Structure of Cambodian Firms: Firms’ Fund Raising Behavior in Highly Dollarized Emerging Markets"をThe Singapore Economic Review Conference 2017(シンガポール、2017年8月2日)で報告し、外部専門家の審査と改訂を経てJICA研究所からWorking Paper No.160として発表された。関連研究として奥田英信・外山雄介「マイクロ金融機関の経営特性の国際比較:DEAと主成分分析を利用したカンボジアとフィリピンの事例」を2017年度日本金融学会秋季大会(鹿児島大学,2017年9月30日)で、奥田英信・相場大樹「カンボジア商業銀行の経営効率性:決定要因と政策的意味」を2017年度アジア政経学会秋季大会(富山大学,2017年10月21日)で報告し討議を行った。両論文は、討議内容を踏まえて学会誌投稿に向けて改訂作業を進めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) カンボジア現地調査:当初の計画通り2017年9月3日から9月9日までの期間に、プノンペン、シェムリアップ、バッタンバン、パイリンで実施した。現地調査では、カンボジアの中央銀行、金融機関、銀行協会、調査会社、AMROなど国際機関の実務者から聴取・意見交換を行って、国内作業による暫定的な計量分析結果について意見交換を行い、疑問点の解消と今後の分析の改善方法の検討を行った。 (2)分析結果の発表:当初の予定通り、分析結果については2017年度日本金融学会秋季大会と2017年度アジア政経学会秋季大会で報告するとともに、『アジア研究』第64巻第2号とJICA研究所Working Paper No.160に研究論文を発表した(詳細は10.研究発表を参照)。 更に当初は予定していなかったが、第1回アンケート調査結果を発表するため、2017年度アジア政経学会春季大会(一橋大学、6月24日)において国際シンポジウム「カンボジア:ドル化から見える政治・経済の実相」を開催し包括的な討論を行った。また、研究成果を活用してカンボジア、ベトナム、ラオスのドル化の国際比較研究にも参加し、Okuda “Banking and Dollarization: A Comparative Study of Cambodia, Lao PDR, and Vietnam,” が2017年10月に出版されたKoji Kubo ed. Dollarization and De-dollarization in Transitional Economies of Southeast Asia, Cham: Springer International Publishing AGに収録された。 (3) データベースの拡充:当初2016年度上半期に実施を予定されていたNBC-JICA共同調査の第2回アンケートは、2017年上半期に実施された。第2回アンケートの内容は、第1回のアンケートの経験を踏まえて改良が図られており、同時に2時点におけるサンプル収集によって時間的な要素を加味した分析が行えるものとなった。集計作業は平成29年度中にほぼ終了し、平成30年度の第2四半期からは、計量分析への利用が可能になると見込まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、研究計画はほぼ順調に進捗しており、今後の研究は当初の計画に沿って以下のように進める予定である。 平成30年度 (1) 東南アジア現地調査:カンボジアおよび東南アジアの研究機関・研究者への、研究結果の公開と意見交換(NBC等との研究発表会開催を含む)を行う。尚、現地調査が行えない場合であっても、国内専門家や国内研究機関での研究成果の発表や意見交換を行うことが可能である。 (2) 研究結果の公開: Okuda and Aiba "Determinants of the Capital Structure of Cambodian Firms: Firms’ Fund Raising Behavior in highly Dollarized Emerging Markets"(JICA-RI Working Paper)、奥田英信・外山雄介「マイクロ金融機関の経営特性の国際比較:DEAと主成分分析を利用したカンボジアとフィリピンの事例」(2017年度日本金融学会報告論文)と奥田英信・相場大樹「カンボジア商業銀行の経営効率性:決定要因と政策的意味」(2017年度アジア政経学会秋季大会報告論文)を学術誌に投稿する。また、カンボジア企業金融研究の成果を社会に広く還元という観点から、「2017年アジア政経学会国際シンポジウム特集」を『アジア研究』第64巻第4号(2018年10月)に掲載予定である。更に、カンボジア調査の成果について、大学紀要『一橋経済学』に総括論文を寄稿するとともに、図書刊行企画を立案中である。
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