2016 Fiscal Year Research-status Report
公的年金の給付が変動する場合にそれを補完する確定拠出年金の最適ポートフォリオ
Project/Area Number |
16K03744
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
臼杵 政治 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90539058)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 確定拠出年金 / 最適資産配分 / ブートストラップ法 / 下方部分積率 / ベクトル自己回帰モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
・研究の最初のステップである、臼杵政治「賃金に連動する公的年金に上乗せされる確定拠出年金の最適資産配分について」『年金と経済』、年金シニアプラン総合研究機構、2015年10月号がFP学会最優秀論文賞を獲得したことから、FP学会総会を含むいくつかの学会でその研究と発展形である本研究について発表し、コメントを受けた。 ・また、一部を改変した当該受賞論文が2017年3月のFP学会誌「ファイナンシャル・プランニング」に掲載された。 ・当該実績をもとに、実務の現状及び今後の研究課題について、証券アナリストジャーナル16年8月号の「展望」欄に「確定拠出年金の改革とデフォルトファンドに関する議論」を執筆した。また、社会保障審議会企業年金部会及び同「確定拠出年金の運用に関する専門委員会」メンバーとして研究成果を述べた。 ・最適ポートフォリオを検証する前提となる、投資対象資産及び賃金・物価のリターン(上昇率)の多数のパスを作成するため、VAR(ベクトル自己回帰)モデルを用い、またリスクの指標として、下方モーメント(下方部分積率)を用いてそれを最小化したポートフォリオ構成を、証券アナリストジャーナル2017年3月号に「物価・賃金ヘッジのための最適資産配分試論―時系列構造と非正規性を考慮した下方部分積率最小化ー」として掲載した(査読有)。 ・研究作業としては、年金数理部会の資料から2015年度までの厚生年金及び国民年金の財政の状況や賃金(標準報酬)の状況をアップデートした。さらに1970年以降の国内債券とグローバル株式リターン、・物価及び賃金上昇率の四半期データから、移動ブロックブートストラップ法を実行するためのデータを整備しつつある。特に賃金については標準宝珠上昇率が年度データでしか得られないため、四半期データに変換するためのモデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・研究課題の前提となる論文が表彰を受けたために、その内容についての文章及び口頭での説明に時間を取られたこと ・名古屋市立大学経済研究所の2016年「公開シンポジウム」の基調報告者兼実行委員となり、東海財務局長や愛知県副知事ら要路のパネリストを招致し、盛大に開催したため、相当程度の時間をとられたこと
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Strategy for Future Research Activity |
・本課題の当初の研究計画では、①シミュレーションを行うためのリターンパスの生成、②公的年金財政モデルの策定、③それらを用いた確定拠出年金の最適ポートフォリオの検証、からなる。 ・2017年度は①及び③について、例えば、実際のリターンが65歳(引退時)時点での目標積立額に到達する経路の上か下かによって、確定拠出年金のリスク資産への配分を変える、動的な(ダイナミックな)資産配分戦略を、一定のポートフォリオを維持する静的な戦略あるいは引退時点に向けて時間の経過とともにリスクを落とす戦略(Target Date Fund)などの一定の経路でリスクを落とす資産配分戦略と比較する。 ・その上で、目標積立額に対する到達確率や達成しなかった場合の下方部分積率(Lower Partial Moment)などからみた、それぞれの配分戦略の優劣について検証していきたい ・2018年度以降は、公的年金財政モデルを策定し、資産及び賃金・物価の変動(リターンパス)によって、給付水準がどう変わるかについて明らかにし ・さらに確定拠出年金の積み立て(給付)が上述のリターンパスごとにどう変化するかを明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
主にデータベース(イボットソン社 Morningstar Direct;年間108万円)の契約が遅れたことにある
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データベース(イボットソン社 Morningstar Direct;年間108万円)の契約は4月に確定しており、108万円の支払が生じる。他に学会発表などを予定している。
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