2017 Fiscal Year Research-status Report
DSGEモデルを用いた量的緩和政策再評価: 超過準備と貸出増加のメカニズム
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16K03745
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
岡野 衛士 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20406713)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量的緩和政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は平成28年度の理論分析の実証に取り組んだ。まず、平成28年度の理論分析で導入した準備預金が預貸スプレッドに反応する金融政策ルール、つまり量的緩和政策ルールを平成28年度に導出したモデルに導入した上で狭義の量的緩和政策が導入されていた2001年~2006年の日本のデータをデータベースより得て量的緩和政策ルールの反応係数を含む構造パラメータを高性能PCおよび行列演算ソフトを用いベイズの手法により推定した。次いで得られた構造パラメータを所与に平成28年度の理論分析で得られた最適量的緩和政策ルールの下でのマクロ経済変数のパスをシミュレーションで求めボラティリティを計算し、実績値のボラティリティと比較し最適量的緩和政策ルールの下でのボラティリティが有意に小さいことを示すことに取り組んだ。さらに厚生費用を実績値から推計される厚生費用と比較し、最適量的緩和政策ルールがより低い厚生コストをもたらすことを確認した(ただし結果の頑健性については議論の余地を残す結果となった)。これらから2001年~2006年の量的緩和政策(QE0)が規模において不十分であり、QE0そのものはマクロ経済の安定化や厚生費用の最小化に十分寄与した可能性が示された。ただし、先にも述べたようにボラティリティが有意に低いわけではないので結果の頑健性については議論の余地を残している。推定とシミュレーションはDSGEモデルへのベイズ推定の応用を提案しているSmets and Wouters(2003)等に従った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
量的緩和政策ルールの反応係数を含む構造パラメータのベイズの手法による推定、得られた構造パラメータを所与とした最適量的緩和政策ルールの下でのマクロ経済変数のパスのシミュレーションおよびマクロ経済変数のボラティリティを計算を終えた。一方、実績値のボラティリティと比較したうえで最適量的緩和政策ルールの下でのボラティリティが有意に小さいことを示すことはできなかった(ボラティリティは小さいものの有意に小さいとは言えなかった)。よって、最適量的緩和政策ルールがより低い厚生コストをもたらすことを確認したもののボラティリティが有意に小さいわけではないので結果の頑健性については少なからず議論の余地を残すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
改めてデータ期間の変更等を通じて頑健な結果を導くことに取り組んでいく。データ期間を変更した上で量的緩和政策ルールの反応係数を含む構造パラメータのベイズの手法による推定をやり直し、シミュレーションを行いボラティリティの計算を行う。HPフィルターについても見直しを行い推定に適切なデータの構成にも取り組み、その上でパラメータの推定に始まる一連の作業に改めて取り組む。
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Causes of Carryover |
学会参加費(Italian Society of Public EconomicsのRegistration Fee)に割引が適応され当初見込みと差異が生じた。
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