2016 Fiscal Year Research-status Report
政府による金融機関の融資への関わりについての理論・実証研究
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16K03750
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡部 和孝 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (80379106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
万 軍民 福岡大学, 経済学部, 教授 (40423123)
寺西 勇生 慶應義塾大学, 商学部(三田), 准教授 (50710456)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リスク転嫁 / 政府系金融機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
テーマ「未上場の預金取扱機関の信用リスク」については、分析手法を応用している上場銀行についての分析結果をまとめたGuizani and Watanabe (2016)が公刊された。この論文では、日本の銀行が預金保険制度にリスクを転嫁していること、また、銀行のリスク転嫁行動は、銀行の財務の健全性に基づく早期是正措置や上手に設計された銀行への公的資金の注入により抑制できることを明らかにしている。未上場銀行については、信用金庫について、信用リスクの指標である保険数理的に公正な保険料率を試算した。テーマ「金融危機時の政府系金融機関の融資と借り手企業への影響」ついては、分析結果をまとめたSekino and Watanabe (2016)を、The 28th Asian Finance Association Annual Meetingで発表した。この論文では、金融危機時にメインバンクの貸し渋りに直面した企業に対して中小企業金融公庫が実施した融資額の大きさが、融資後3年間、借入れ企業に負の効果を与えているものの、それ以降、効果が中立的であることを明らかにした。また、研究分担者の寺西勇生氏と共同で、Takakazu Honryo氏(University of Mannheim)、及び、Hitoshi Shigeoka氏(Simon Fraser University)の講演会を開催した。
Sekino, Masahiro, and Wako Watanabe (2016), "Does the Policy Lending of a Government Financial Institution Mitigate the Credit Crunch? Evidence from Loan Level Data in Japan," mimeo.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は1.未上場の預金取扱機関の信用リスク、2.銀行への公的支援と政治の関係、3.金融危機時の政府系金融機関の融資と借り手企業への影響、4.国際的な金融緩和政策のエマージング国企業の資金調達に与える影響、5.中国における銀行の不動産へのエクスポージャーの銀行行動への影響の5テーマから構成される。 1については、分析に必要な信用金庫のデータを慶應義塾大学図書館で契約されているBankscopeから収集した。2については、共同研究者のYaroslav Mozghovyi氏(Sumy State University)と研究の方向性について議論した。3については、日本政策金融公庫に設置された研究者、実務家をメンバーとする研究会に参加、議論し、Sekino and Watanabe (2016)を学会、The 28th Asian Finance Association Annual Meetingで発表、当学会等で受けたコメントを基に論文を修正するとともに、投資等、収益性以外の企業のパフォーマンス指標について検討した。4.については、ビューロー・ヴァン・ダイク・エレクトロニック・パブリッシング株式会社と契約して入手したデータベースORBISから、エマージング国・経済の各企業の決算項目のうち、共同研究者の服部正純氏(一橋大学)との議論に基づき選択した項目から構成される2006年から2015年までの10年間の約590万社のデータセットを大学院生のアルバイトを雇用して整備した。5については、研究分担者の万軍民氏(福岡大学)と議論するとともに、福岡大学図書館に所蔵されている「中国房地産統計年鑑」をコピーしデータを収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
1については、今年度は、信用金庫についてのデータを拡充し、信用リスク指標、各種財務指標を用いて信用金庫の預金保険制度へのリスク転嫁の程度について検証、分析結果を論文としてまとめる。2については、ウクライナ国立銀行(中央銀行)の銀行への流動性供与、ウクライナの銀行の役員構成についてのデータを収集、来年度以降のデータの分析、論文作成の準備を整える。3については、中小企業金融公庫による金融危機対策融資の指標を説明変数に加えた企業の投資関数を推計し、論文を拡張する。4.については、構築した大規模な企業データベースを用いて、回帰分析を中心とした統計的分析を実施する。5については、中国の不動産規制の地方別の状況について調査し、引き続きデータを収集し、来年度以降のデータの分析、論文作成の準備を整える。
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Causes of Carryover |
研究計画で予定していたワークステーション(29.9千円)の購入を中止し、共同研究者のBrahim Guizani氏(University of Jendouba, Tunisia)を招聘したこと(25.6千円)など研究上の支出に変更があったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、プリンターのトナーなど研究運営費用として消化する予定。
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Research Products
(6 results)