2017 Fiscal Year Research-status Report
政府による金融機関の融資への関わりについての理論・実証研究
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16K03750
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡部 和孝 慶應義塾大学, 商学部(三田), 客員教授 (80379106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
万 軍民 福岡大学, 経済学部, 教授 (40423123)
寺西 勇生 慶應義塾大学, 商学部(三田), 准教授 (50710456)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 破たん確率 / 政府系金融機関 / 金融政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
テーマ「未上場の預金取扱機関の信用リスク」については、未上場銀行の破たん確率の推計に必要な上場銀行、未上場銀行の財務データ、上場銀行の株価総額を収集、整備した。 テーマ「金融危機時の政府系金融機関の融資と借り手企業への影響」ついては、分析結果ををESRI DPとして公表するとともに、一橋大学大学院商学研究科、Monetary Economics Workshop(甲南大学)、30th Australasian Finance and Banking Conference、IFABS Ningpo China Conferenceで発表した。この論文では、中小企業金融公庫によるクレジットクランチ(信用収縮)期の融資がメインバンクからの企業の借入の減少を緩和したこと、借入減少を緩和する貸出を捕捉する、資本充足度(capital adequacy)により説明できるメインバンクの貸出供給の成長率を操作変数とした中小公庫貸出が、企業の収益性、投資率に負の効果を持っていたこと、中小公庫貸出が企業の金融制約を捕捉するキャッシュフローの現預金感応度(cash sensitivity of cash)を緩和する弱い効果を持っていたことを明らかにした。 「マクロプルデンシャル政策の包括的分析」として、これまで取り組んできた「先進国における金融緩和政策のエマージング国への伝播」、「中国の不動産エクスポージャーと銀行の融資の関係」についてはデータ整備を行った。また、あらたに、「金融緩和政策と銀行のリスクテイク」のテーマを立ち上げ、必要なデータを収集、整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は1.未上場の預金取扱機関の信用リスク、2.銀行への公的支援と政治の関係、3.金融危機時の政府系金融機関の融資と借り手企業への影響、4.国際的な金融緩和政策のエマージング国企業の資金調達に与える影響、5.中国における銀行の不動産へのエクスポージャーの銀行行動への影響、6.金融緩和政策と銀行のリスクテイク、の6テーマから構成される。 1については、分析に必要な上場地方銀行、未上場金融機関の各年度の財務データを慶應義塾大学図書館で契約されているBankscope、日経NEEDSから、上場地方銀行の日次の株式総額のデータを日経NEEDSから収集、整備した。2については、ウクライナの企業の財務データを貸し手銀行のデータに接続し分析に用いるデータセットを作成した。3については、Sekino and Watanabe (2017)をESRI DPとして公表するとともに、一橋大学大学院商学研究科、Monetary Economics Workshop(甲南大学)、30th Australasian Finance and Banking Conference、IFABS Ningpo China Conferenceで発表した。4.については、ビューロー・ヴァン・ダイク社と契約して入手したデータベースORBISから収集したデータを整理し、大規模なデータセットを作成した。5については、研究分担者の万軍民氏(福岡大学)とデータについて議論した。6については、先行研究をサーベイするとともに、経済産業研究所を通じて、企業活動基本調査(経済産業省実施)、コスモス(帝国データバンク提供)の企業についてのデータを取得、設備投資、国内/海外直接投資の推計に必要な項目を整備、パネルデータを作成した。また、共同研究者の小倉義明氏(早稲田大学)から分析に必要な貸し手銀行についてのデータの提供を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
1については、今年度は、まず倒産確率の計算に必要な資産の市場価値、資産のボラティリティを計算、この2変数と各財務変数の関係を推計する。さらに、その関係を利用して、未上場銀行の資産の市場価値、資産のボラティリティを予測する。2については、ウクライナ国立銀行(中央銀行)の銀行への流動性供与、ウクライナの銀行の役員構成についてのデータを収集、来年度以降のデータの分析、論文作成の準備を整える。3については、国際査読雑誌(ジャーナル)に投稿する。4.については、構築した大規模な企業データベースを用いて、回帰分析を中心とした統計的分析を実施する。5については、中国の不動産規制の地方別の状況について調査し、引き続きデータを収集し、来年度以降のデータの分析、論文作成の準備を整える。6については、分析に用いるデータセットを作成し、回帰分析を実施する。
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Causes of Carryover |
国際査読雑誌(ジャーナル)の投稿料の支出が2017年度内に行われなかったため次年度に支出することとした。
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Research Products
(4 results)