2018 Fiscal Year Research-status Report
政府による金融機関の融資への関わりについての理論・実証研究
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16K03750
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡部 和孝 慶應義塾大学, 商学部(三田), 客員教授 (80379106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
万 軍民 福岡大学, 経済学部, 教授 (40423123)
寺西 勇生 慶應義塾大学, 商学部(三田), 准教授 (50710456)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 破たん確率 / 政府系金融機関 / 金融政策 / 設備投資関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
テーマ「未上場の預金取扱機関の信用リスク」については、収集した未上場の信用金庫の破たん確率の推計に必要な上場地方銀行、信用金庫の財務データ、上場地方銀行の株価総額のデータから信用金庫の破たん確率を推計し、さらに、推計された信用金庫の破たん確率が事後的な信用金庫の破たんをよく予測していることを明らかにした。その結果は2018年10月に日本金融学会秋季大会及びVietnam Symposium in Banking and Financeで、2019年3月にWEAI 15th International Conferenceで発表し、内閣府経済社会総合研究所からESRI DPとして2019年4月に公表されることが確定している。論文は、学会等で受けたコメントを基に改訂中である。また、信用金庫の合併を評価するため、信用金庫の合併についてのデータ、信用金庫間の物理的距離についてのデータを収集した。 テーマ「金融危機時の政府系金融機関の融資と借り手企業への影響」ついては、分析結果をまとめたSekino and Watanabe (2017)を改訂して、2018年3月にJournal of Money, Credit and Bankingに投稿し採択不可になった際のコメントを検討し、論文を大幅に改定するべきか検討を行った。 「マクロプルデンシャル政策の包括的分析」の一環としての「金融緩和政策と銀行のリスクテイク」については、必要なデータ収集、整理、アベノミクスとも形容される極端な量的緩和政策により企業の金融環境が大幅に緩和された時期に、日本企業は大企業を中心に、新規設立、買収などで海外の子会社・関連会社を急速に増加させた一方で国内の子会社・関連会社、設備投資は横ばいにとどまったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は1.未上場の預金取扱機関の信用リスク、2.銀行への公的支援と政治の関係、3.金融危機時の政府系金融機関の融資と借り手企業への影響、4.国際的な金融緩和政策のエマージング国企業の資金調達に与える影響、5.中国における銀行の不動産へのエクスポージャーの銀行行動への影響、6.金融緩和政策と銀行のリスクテイク、の6テーマから構成される。 1については、分析結果を論文にまとめ日本金融学会秋季大会で、2019年3月にWEAI 15th International Conferenceで発表し、内閣府経済社会総合研究所からESRI DPとして2019年4月に公表されることが確定している。また、信用金庫の合併を評価するため、信用金庫の合併についてのデータ、信用金庫間の物理的距離についてのデータを収集している。 2については、データセットの基本的傾向を調査したにとどまっている。3については、Sekino and Watanabe (2017)を投稿するべき国際査読雑誌について検討したにとどまっている。4.については、整備済の大規模データについて基本的な傾向について調査したが共同研究者の私的な事情で研究の進捗が滞っている。5については、研究分担者の万軍民氏(福岡大学)とワークショップを開催するなど議論を継続している。6については、先行研究をサーベイするとともに、経済産業研究所を通じて、企業活動基本調査(経済産業省実施)、コスモス(帝国データバンク提供)の企業についてのデータを取得、設備投資、国内/海外直接投資の推計に必要な項目を整備、パネルデータを作成し、データに収録された各変数について基本的な統計分析を行い、2019年度前半には基本的な統計分析結果をまとめた結果をRIETI DPとして公表することが確定している。また平行して、ベンチマークとして設備投資関数を推計した。
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Strategy for Future Research Activity |
1については、今年度は、WEAI 15th International Conferenceで指定討論者のRicardo Correa博士の技術的なコメントに基づいて改訂し、2019年5月締切のFDIC-JFSR 19th Annual Bank Research Conferenceの投稿を目指す。また、信用金庫間の距離についてのデータに加えて信用金庫のコンピューター投資についてのデータを整備し、信用金庫の合併の破たん確率への効果の識別を試みる。なお、分析にあたっては、信金中金、金融庁等の実務家と積極的に議論し、分析結果の妥当性について検証する。 2については、ウクライナ国立銀行(中央銀行)の銀行への流動性供与、ウクライナの銀行の役員構成についてのデータを収集、来年度以降のデータの分析、論文作成の準備を整える。3については、国際査読雑誌(ジャーナル)に投稿する。4.については、共同研究者に時間的余裕ができたため、構築した大規模な企業データベースを用いて、回帰分析を中心とした統計的分析を実施する。5については、中国の不動産規制の地方別の状況について調査し、引き続きデータを収集し、来年度以降のデータの分析、論文作成の準備を整える。6については、設備投資関数、国内/海外直接投資関数を推計し、さらに、金融政策指標の各関数への影響について分析する。
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Causes of Carryover |
分担者の今年度の研究計画が業務多忙により遅れており、研究費の次年度に繰り越すこととなった。次年度は当初予定していた計画を引き続き進めてもらい、円滑な研究費の執行を試みる。
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Research Products
(5 results)