2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03757
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
坂井 功治 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (80548305)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 資金再配分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、引き続き、『法人企業統計季報』(財務省)の個票データ(四半期ベース)を用いて、特に企業間の資金再配分と生産性の関係性について追加分析を行った。生産性にはdeLoecker and Warzynski (2012)の手法に基づいて推計した企業別のTFPを用い、企業ごとの有利子負債伸び率とTFPの関係性について推計を行った。本分析で得られた主な結果は以下である。まず、1980年度から2014年度までの全期間を通じた推計では、資金はTFPがより高い企業に配分されており、この期間における日本企業の資金再配分は総じて効率的なものであったといえる。また、資金がTFPの高い企業に選別的に配分されるこの傾向は不況期ほど強まる傾向にあり、Foster et al. (2016)らが示した不況期のcleansing effectがこの期間の日本においても機能していたことが示された。しかしながら、バブル崩壊後の長期停滞期である1991年度から2000年度の推計では、資金はTFPがより低い企業に配分されており、この期間には資金再配分の非効率性が存在していたことが示された。また、この非効率性は不況期においてより深刻であり、この期間にはcleansing effectも適切に機能していなかったことが示された。本成果は、ディスカッションペーパーの改訂版に反映させ、2017年7月に公表済みである。また、本年度は、上記以外に、量的・質的金融緩和政策と銀行株価の関係性に関する研究、資金再配分の効率性と景気変動の関係性に関する研究をそれぞれ国内の学術雑誌にて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた資金再配分と生産性の関係性についての分析が終了し、ディスカッションペーパーの改訂作業も完了したため、あとは学術論文への投稿作業を残すのみであり、進捗はおおむね当初の予定通りである。また、本年度は、本研究以外にも量的・質的金融緩和政策と銀行株価の関係性に関する研究、資金再配分の効率性と景気変動の関係性に関する研究などの成果を国内学術雑誌ですでに公表しており、全体の進捗は総じて順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本企業の資金再配分に関する研究については、研究会や学会などでの成果報告や意見交換をふまえ、ディスカッションペーパーの原稿を修正・整理したうえで、論文を海外学術雑誌へ投稿する。また、それと並行して、日本の戦前期における資本市場統合メカニズムに関する研究、銀行企業間取引における物理的距離の役割に関する研究も進め、次年度中に成果を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度におけるデータベース・書籍・統計ソフトウェアの費用、学会・研究会への参加旅費等が、当初見込みを下回ったため繰越が生じたもの。次年度におけるデータベース・図書などの物品費、研究成果報告や学会・研究会への参加のための旅費として使用する計画である。
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