2016 Fiscal Year Research-status Report
戦間期における国際的金本位制の改廃に対する金融市場側の対応とその帰結の検討
Project/Area Number |
16K03767
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高橋 秀直 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00633950)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 経済史 / 金融史 / 外債 / 金本位制 / 国際金融センター |
Outline of Annual Research Achievements |
両大戦間期における国際金融制度の転換に対する、市場側の対応策を検討することが本研究計画の目的である。特に、1931年における国際金本位制の停止に対する市場側の動きに着目して分析する。大きな制度転換の前後の連続性と断絶性を、市場側の対応を通じて理解する。 当時の金融市場の変動に、いかなる動きが現れたのかという点に着目して、分析を進める。金融市場と言っても、様々なものがあるが、本研究は、当時の資本市場に着目する。中でも、当時のロンドン市場を代表とする、外債市場の変動に着目する。当時の外債取引に着目する理由は、データの充実度及び、利用できる資料の多さという点にある。 また、本研究は、当時の中心国と周辺国の一般的な関係を、日本の経験を通じて検討することにより、明らかにしたいとも考えている。19世紀末に近代化を開始した日本は、その後、経済大国に成長する。いわば、19世紀における成功した発展途上国であった。当時の途上国の多くは、国際金融センターであるロンドンなどの金融市場において債券を発行することで、経済成長に必要な資金を調達した。それゆえ、日本の外債発行の経験の分析をすることは、当時の国際金融センター国と周辺国の間の一般的な関係を考える手がかりになると判断した。 平成28年度は、このような研究方針を学会報告や論文で公開した。まず、学会報告を行い、研究の方向性と情報収集における助言をいただくことで、平成29年度以降の研究方針を決定することができた。また、論文を出版することで、本研究計画の方向性を公開した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画の初年度として、特に、①いかなる事例を分析することに意義があるのかという点、②経済史研究が持つ他分野への意義について、検討した。まず、ロンドンやニューヨークなどの国際金融センターと周辺国の関わりがいかなるものであったのかという一般的な論点、そして、当時の国際金融センターにおける一般的な取引慣行を明らかにするために、日本の事例を検討することが貴重な手掛かりを与えてくれるという点を、明らかにした。そして、③第一次大戦以前の時期と第一次大戦後の両大戦間期と呼ばれる時代では、国際金融制度の安定性が大きく変わったことが、当時の金融市場の参加者にいかなる影響を与えたのかという点も考察する必要がある点を明確にした。両大戦間期の時期は、国際金融制度の改廃が頻繁になされた時期である。このような時代的な特徴をいかなる方法で示すのかという点も重要な論点として意識した。 以上の点を明らかにするための準備作業を行うことに努めている。1920-1930年代のロンドン及びニューヨーク市場における外債価格の変動を利用することで、当時の市場参加者の動きを推測するという研究計画を実際に実行した。 現在までは、研究方針を定める点に焦点を合わせてきたため、当初予期していなかった研究上の困難は今のところない。今後は資料調査やデータ収集において、いくつか問題が発生する可能性がある点は意識している。仮に問題が発生した場合でも、助言を仰げる研究者と連絡を密にしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度における学会での報告などで、このような研究計画の方向性に対して、価格分析における改善点及び、当時の外債取引に関わる様々な論点について、どの程度の資料を利用することが可能であるのかという情報について、詳細な助言を頂くことができた。その結果、当初の研究計画の遂行に大きな問題は無いと判断できた。そのため、平成29年度も、この研究計画の実施に大きな支障はないと判断した。昨年度と同様に、今年度においても、学会報告の準備過程において、様々な情報を得られており、研究遂行上の問題点は今のところない。
|
Causes of Carryover |
平成28年度において、学務などの事情のため、予定していた海外出張を実施しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、海外出張を行う予定である。しかしながら、国際情勢の変動などで、海外出張の危険性が高まるのであれば、適宜予定を変更する可能性もある。
|
Research Products
(2 results)