2020 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の地域における「生存」の仕組みの基礎的実証的研究
Project/Area Number |
16K03770
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大門 正克 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特任教授 (70152056)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 経済史 / 生存 / 福祉 / 福祉国家 / 生活改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査研究は、戦後日本の地域における「生存」の仕組みの基礎的実証を進めるものであり、岩手県及び岩手県内の2カ所を対象にしている。 研究代表者は、長年、岩手県をフィールドにした研究を進めており、本研究によって「生存」の仕組みに関する地域の基礎的実証的研究を進展させる条件を十分に整えている。岩手県は、1950~60年代にかけて、生活改善運動や国民健康保険事業、公立病院設置、保健婦活動などが先導的に展開した地域であり、本研究の構想を実証研究するのに格好の地域である。今までの準備をふまえ、令和元年度には「生存」の仕組みの基礎的実証的研究を進展させている。 岩手県では、内陸部の北上市と三陸沿岸部の陸前高田市の2地域で調査研究を進めている。研究代表者はこれまで、とくに北上市和賀町の生活改善と医療・保健、地方自治体の対応、農村女性の取り組みについて調査研究を進め、1950~60年代前半までの「労働と生活」「国家と社会」の位相から「生存」の仕組みを検証してきた。本研究では、さらにその後の1960年代後半から1980代を対象として、「生存」の仕組みを検証しようとしている。 陸前高田市では、1970年代における広田湾開発問題と反対運動を検証するなかで、「人間と自然」「労働と生活」「国家と社会」の3つの位相から「生存」の仕組みを検証しようとしている。陸前高田市は、2011年の東日本大震災で市街地が壊滅的な打撃を受けた地域だが、その後の調査を通じて、奇跡的に残存した広田湾地域開発関連資料を発見することができた。平成31度には、地域開発関連資料の検討を通じて3つの位相から「生存」の仕組みの検証を進めるとともに、新たに1990年代から2010年代における保育運動の関連資料も発見することができたので、その整理を始めている。 以上の2地域での基礎的実証的研究を通じて「生存」の仕組みの構想を検証しようとしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、研究はおおむね順調に進んでいる。岩手県の2地域に関する「生存」の仕組みに関する調査研究を進めるために、調査研究は岩手県と北上市和賀町、陸前高田市で取り組んでいる。 岩手県では、1960~70年代の県政について、とくに地域開発の調査研究を進めている。具体的には、岩手県庁、岩手県立図書館、各大学などで本格的調査を行っている。本年度は、資料の分析を進めている。 北上市和賀町では、今まで進めてきた町役場や農協、婦人会、生活改良グループ、生活記録などの調査を1960年代後半~80年代まで延ばして継続し、生活改良普及員や社会教育主事については聞き取りも行っている。農村女性の労働負担軽減とかかわる産育(出産と育児)は、地域の「生存」」の仕組みにとって大きな役割をはたしたので、助産婦や母子保健センターの調査を行っている。本年度は、1960年代後半~70年代の資料の全貌把握と分析を進めている。 陸前高田市では、1970年代における陸前高田市の広田湾開発問題とその反対運動をめぐり、平成29年度に発見した2つの資料(反対運動の当事者が保存していた資料と、地域新聞『東海新報』の記者が所有していた資料)の本格的検討を継続している。その後、令和元年度には、新たに、1990年代~2010年度における保育関連資料を発見でき、補助事業期間延長を申請して承認されたので、令和2年度にはとくに保育関連資料の分析・検討を進め、令和2年11月1日には陸前高田プレ・フォ―ラムを現地とオンラインで開催し、保育関連事業に関する報告を行い、成果を発表するとともに、報告についての意見をいただき、研究成果をまとめる準備が整いつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、令和元年度に続き、本研究の期間延長が承認された年度にあたる。調査研究は、引き続き岩手県、北上市和賀町、陸前高田市で行うとともに、調査研究のまとめを行う。 岩手県では、1960~70年代の県政について、とくに地域開発の調査研究の補充を行う。具体的には、岩手県庁、岩手県立図書館、各大学などで補充調査をする。本年度は、平成28年度に収集した資料の分析・論文執筆を進める。 北上市和賀町では、令和元年度に続き、町役場や農協、婦人会、生活改良グループ、生活記録などの調査を1960年代後半~70年代まで延ばして継続し、生活改良普及員や社会教育主事については聞き取りも行う。農村女性の労働負担軽減とかかわる産育(出産と育児)は、地域の「生存」」の仕組みにとって大きな役割をはたしたので、助産婦や母子保健センターの調査を補充する。今年度は、発足した北上市史編さん委員会の協力を仰いで補充の調査を行う。 陸前高田市では、1970年代における陸前高田市の広田湾開発問題とその反対運動をめぐり、新たに発見した2つの資料(反対運動の当事者が保存していた資料と、地域新聞『東海新報』の記者が所有していた資料)の本格的分析と執筆を進める。加えて、令和元年度に新たに発見された保育関連資料の最終調査・検討・分析を行い、成果のとりまとめを行う。以上の調査と論文執筆を通じて本研究をまとめる。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により、予定していた調査を実施することができなかったため。今年度は、対象地2か所での調査研究を実施し、研究を最終的に完成させた論文を発表する。
|
Research Products
(4 results)