2022 Fiscal Year Research-status Report
占領下におけるアメリカの対日援助の研究-産業支援を中心に-
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16K03776
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
大畑 貴裕 京都橘大学, 経済学部, 准教授 (80736405)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | GHQの産業支援 / 米国政府の対日支援 / 産業支援的な占領政策 / 日本経済の復興 / 石炭鉱業の復興 / 鉄鋼業の復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナ感染問題のために内外の資料所蔵機関へのアクセスが昨年度に引き続き制限され、所定の計画通りには資料調査・収集ができなかった。ただ国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ文書等の諸資料の調査を進捗させ、また収集資料の解読を進めたことから、以下のような研究成果を得ることができた。 第1に、日本石炭鉱業に関する占領政策を経済科学局、参謀第4部、天然資源局等の占領軍・GHQ内の諸部署がどのようにして調整していたのかという点に関して、その諸特徴をGHQ天然資源局の鉱業地質課の活動を中心に明らかにすることができた。またGHQが必要な情報をどのように収集していたのかという点についても解明を進めることもできた。これらについては論文として発表した(「GHQによる日本石炭鉱業に関する占領政策(5)」『広島大学経済論叢』第46巻第3号、2023年3月)。 第2に、占領軍・GHQ内における石炭割当に関する利害を調整し日本側の石炭配当計画を審査・改定していた「極東軍割当委員会」についての資料収集・整理をほぼ終えることができた(昨年度の研究水準の底上げができた)。本会議および小委員会(2つもしくは3つの系統の小委員会があった)に関する会議録や関連文書について、作成されたと推測される分はほぼ収集できた。それら会議録はGHQ文書中に散在しているため、「繋ぎ合わせる」作業が必要であったがそれを完了できた。現在、収集資料の解読を進めているところである。 第3に、GHQによる鉄鋼業に関する占領政策についての資料調査・収集を推し進めることができた。ただこの点について、まだ全体像の把握には至れていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れていることの主要因は、昨年度と同様である。新型コロナ感染問題のためにいくつかの資料所蔵機関へのアクセスが制限・禁止されたためである。特に所属大学の休暇期間中にアメリカと日本との行き来やアメリカ国立公文書館へのアクセスに制限が残っていたこと等から日程が合わず、結果的に渡米を断念せざるを得ず、当該研究の完成にとって必須のアメリカ陸軍省等の資料を調査することができなかった。 また当初の予想以上に多数の石炭鉱業関連のGHQ文書が存在しており、その全般的な調査と解読に、当該計画提出時の想定以上の時間が掛かってきたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最大のネックはアメリカでの資料収集の遅延であったが、現時点で新型コロナ感染問題によるアメリカへの渡航制限や国立公文書館へのアクセスの制限は原則解除されたので、2023年度中に渡米して国立公文書館所蔵の陸軍省等の関係資料を調査したい。 また国会図書館所蔵のGHQ文書は調査すればする程に関連資料が見つかり、きりがないと言える状況ではあるが、少なくとも石炭鉱業に関してはGHQ文書中の残存資料の全体像の骨子(論文化のポイントとなる資料)は把握できている。まだ収集できていない少数の資料を集めつつ手元資料の解読を進め、数本の論文の完成を急ぎ進める所存である。 鉄鋼業に関する占領政策の研究は石炭鉱業に関する研究よりも遅延しているが、論文化を前提に資料調査に注力して全体像を把握したい。
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Causes of Carryover |
最大の要因は研究の遅延であるが、それは2020年以降、新型コロナ感染問題のために内外の資料所蔵機関へのアクセスが禁止・制限されてしまい所定の計画通りに資料調査が実施できなかったことが主な原因である。したがって、さらに1年間の当該研究の延長を申請したことから、次年度使用額が生じた。次年度は主にアメリカ国立公文書館での調査のために、当該の資金を支出する計画である。
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