2018 Fiscal Year Annual Research Report
The study of the system of the distribution of commodities and the price control in German war economy under the National Socialism.
Project/Area Number |
16K03781
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
柳澤 治 首都大学東京, 経営学研究科, 客員教授 (00062159)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナチス・ドイツ / 流通システム / 価格政策 / 戦時体制 / 小売業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ナチス・ドイツ(1933-45年)の戦争準備・戦時体制における商品流通・価格システムを解明することにある。2016(平成28)・2017(平成29)年度は、戦時期ドイツにおける商品取引の国家的統制機関であるライヒ取引統制所(Reichsstelle)の機能と、生活用品の流通過程を担当する小売商業(小売商人・手工業者)の具体的な状況を分析し、4カ年計画期・第二次大戦期における小売商・手工業者たちの経営活動の対応と破綻の状況、それに伴う日用品取引の困難化のメカニズムを明らかにした。それは同時にナチス体制の下で総力戦体制の完成をめざすいわゆるシュペーア体制と小売業維持を求める親衛隊のオーレンドルフら勢力との対立関係をつくり出した。最終年度はナチス期の価格政策を分析し、戦時期の軍需品など国家発注品の原価計算と価格算定方式、均一価格制とそれに対する企業側の対応を解明した。ナチス体制はしばしば反資本主義的とされて来たが、しかし、ナチズムは営利原則を否定せず、生産コスト+適度な利潤に基づく商品価格を原則として採用していたことが示された。本研究はさらにそのような生産価格・適正価格の認識がドイツにおいていつごろから定着していたのかを考察した。前2年間の研究成果は、柳澤治著『ナチス・ドイツと中間層』(日本経済評論社、2017年)ほかとして公にした。最終年度の研究成果は、論文「産業革命開始期ドイツにおける生産価格・利潤論」(仮題)としてすでに出来上がっており、学術雑誌への投稿を計画している。
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