2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on a statistic Analysis of the middle class thesis of National Socialism and the Economic Order of the agricultural and Food System in the Nazi State.
Project/Area Number |
16K03784
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
雨宮 昭彦 首都大学東京, 経営学研究科, 客員教授 (60202701)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ナチズムの中間層テーゼ / 大土地所有 / 回帰分析 / 国家世襲財産制 / 家族世襲財産制 / 自然保護法 / 生産関数 / 人口政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果は以下の通りである。1)ヘベルレによればナチ党の主要支持層は中小規模農民であり、同党支持率は大経営と農業労働者の比率とは負の相関関係にある。これら変数に関する反証可能命題について全ドイツを分析対象に回帰分析を試みた結果、ヘベルレの見解には根本的な修正が必要であるとの結論に至った。1932年7月の国会選挙分析では、0.51-20haではナチ党支持率と負の相関性を示した一方、大経営ほど相関係数も回帰係数も大きくなり、100ha以上において初めて明瞭な正の相関性を示した。この傾向は1933年3月の国会選挙でも確認しえた。2)ナチ党の主要支持層である大土地所有経営は、第三帝国では労働生産性の高い農業生産力の担い手として別格にあり、その一方で、新設の国家世襲財産制を担う中小農民は人口政策の担い手として期待されたことがベームの分析では示された。この農民経営については、農業生産性向上という国家課題への対応として農業集約化・土地生産性の向上が生産闘争の名のもとに追求された。1935年の国家自然保護法では、エコロジーの観点から、大経営を生産闘争から分離しようとする意図も示唆された。3)大土地所有層の巨大資産を維持する伝統的制度であった家族世襲財産制は第三帝国では法的には解体されたが、実質的には新制度の下に、エコロジー・公共性思想の支援をも得て、森林・耕作地の一体的経営を行う巨大土地所有を以前と同様に保護・維持し続けた。家族世襲財産制が伝統的に育んできた身分や権威に関する農村社会の心性は、国家世襲財産制下の農民を、新貴族の名の下に第三帝国の統治手段として利用するための政治的資源となった。4)第三帝国の法令によって、従来は家族世襲財産制に付帯していた債務設定の制約から大土地所有は解放され、この巨大不動産は国際金融市場での起債によって流動化し、第三帝国の資金源としても機能した。
|