2016 Fiscal Year Research-status Report
インド・ビジネスグループの歴史的起源:内部文書が語る経営代理会社の補完的機能
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16K03786
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
野村 親義 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (80360212)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インド / ビジネスグループ / 経営代理会社 / 植民地 / 機能補完性 / 制度補完性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である平成28年度の主たる作業は、本研究に最も必要な史料であるInvestors’ India Yearbookを閲覧・収集し、収集した史料をもとに1910年代から1940年代までのインド主要企業の財務情報を整理することであった。本研究申請書作成段階では、Investors’ India Yearbookをフルセット度保管している大英図書館に赴いて同書を閲覧・収集する予定であったが、本年度はひとまず日本各地に分散して保管されているInvestors’ India Yearbookを用い、予備的作業を行った。具体的には、本研究が対象とする40年分の当該史料のうち、1/3近くを日本国内で収集し、現在、収集した膨大なデータのパソコンへの入力作業を行っている。加えて、入力したデータをもとに、株主資本利益率、総資産利益率などの財務情報の整理も行っている。整理の過程で、経営代理会社系企業とそれ以外の企業との間で株主資本率などの指標に違いがあるか否か、などの予備的調査も行っている。 これら当初予定していた史料の閲覧・収集作業に加え、平成28年度は、植民地期インドの経営代理会社やその傘下企業を取り巻く環境を形成した植民地経済一般に関する概説文並びに、経営代理会社やその傘下企業などが資金調達に際し頻繁に用いたフンディ(約束手形)に関する概説文を寄稿した。寄稿した原稿は平成29年度出版予定である。 さらに平成28年度は、植民地期インドの経営代理会社の内実やその傘下企業の内実、ならびに経営代理会社を取り巻く植民地経済一般に関する研究報告を5回行った(日本語での報告2回、英語での報告3回)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究申請書作成段階での平成28年度の最大の作業課題は、Investors’ India Yearbookを中心とする史料の閲覧・収集であった。実際のところ、平成28年度は、最も重要な史料であるInvestors’ India Yearbookを1/3ほど収集し、さらに、これら収集した膨大なデータのパソコンへの入力作業を行った。この入力作業には極めて多くの時間を要するが、他方で、資産(固定・流動)、負債(流動・固定)、資本(資本金、各種準備金など)の貸借対応表関連情報のみならず、年々の売上高、経常利益、税金などの損益計算書関連情報も年度ごとに主要業種の主要企業合計100社程度の情報を入手することができ、植民地期インドの経営代理会社やその傘下企業の財務動向の実態が徐々に明らかになってきている。 加えて、平成28年度は、研究成果の一部を、国内外の研究会で報告する機会を得た。本計画申請書作成段階では、研究成果の報告は平成29年度以降の課題であったが、平成28年度は、1/3ほどの史料の収集作業を国内で行い、収集したデータの入力と入力したデータの分析作業を予定より早く始めることができたため、成果報告の機会を得ることができた。 申請書作成段階とは具体的な作業の進捗の在り方は異なるものの、全体的にみて、平成28年度を終えた今、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降の作業として、まず、日本で収集が難しいInvestors’ India Yearbookの残り2/3の閲覧・収集作業を大英図書館などで行う。加えて、Investors’ India Yearbookが示す企業毎の財務情報を補完する史料を、インドのネルー記念図書館やイギリスのダンディー大学公文書館などで閲覧・収集する。 そのうえで、時間がかかる作業であるが、Investors’ India Yearbook記載の個別企業の財務関連情報のパソコンへの入力作業を続ける。この作業は、当初予定していたより多くの時間を割く必要のある作業であるものの、重要性にかんがみ、特に平成29年度は多く時間を割く予定である。 さらに、平成29年度以降は、平成28年度同様、国内外の研究会等で研究成果を報告し、その過程で、ワーキングペーパーの執筆も開始する。
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Causes of Carryover |
本研究申請書作成段階では、平成28年度は長期イギリスに赴き、Investors’ India Yearbookをはじめとする史料の収集を行う予定であった。ところがデータの入力・分析の作業効率向上を目的に、平成28年度は、収集予定の40年分のInvestors’ India Yearbookのうち1/3ほどを有する日本の図書館でこれら史料の閲覧・収集作業を行い、予定より早くデータの入力作業とその分析作業を開始した。そのため、申請書作成段階で平成28年度支出項目として大きな額を占めていた海外旅費を使用する必要がなくなった。加えて、申請者が所属する大学から支出される繰り越し不可能な学内研究費を用い国内図書館所蔵のInvestors’ India Yearbookの収集・分析作業を行ったため、当初予定していた史料複写などにかかる費用を使用する必要もなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データの入力・分析の作業効率向上の必要性から平成28年度は、当初予定していたイギリスでの史料収集作業を行わなかったが、この作業は、平成29年度から平成30年度前半にかけて、ぜひとも行う必要がある。平成29年からの1年半の間に行うこの史料収集作業に、今回繰り越した使用額が用いられることとなる。
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Research Products
(5 results)