2021 Fiscal Year Research-status Report
リーマン・ブラザーズ社と金融危機―投資銀行発達史の視点から―
Project/Area Number |
16K03791
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 俊夫 東北大学, 経済学研究科, 名誉教授 (00139982)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 投資銀行 |
Outline of Annual Research Achievements |
2008年9月15日,米国の巨大投資銀行リーマンブラザーズ社が経営破綻した。本研究の目的は米国の金融史を踏まえて,リーマンブラザーズ社が破綻の原因を明らかにするところにある。この目的の為,ハーバード・ビジネススクールを訪問し,保存されているリーマンブラザーズ社の経営資料の調査を実施した。デジタルカメラで関係資料を撮影し,現在収集した資料の分析を進めている。また,リーマンブラザーズ社に吸収合併された米国の投資銀行であるクーンローブ社の経営者J.シフの文書をAmerican Jewish Archivesを調査し,資料の所蔵を確認して収集し,合わせて分析している。この作業により,クーンローブ社とリーマンブラザーズ社との合併に至る過程が具体的に解明されるものと思われる。クーンローブ社は,かつて高橋是清が行った日本の外債発行に大きな役割を果たしたことで知られている。これらの資料を分析することを通じて投資銀行がアンダーライティングやシンジケートを組織する上で果たした役割が明らかになると思われる。投資銀行の経営においてリスクを分散させる為にはアンダーライティングやシンジケートの果たす役割は重要となる。金融機関がこれらの金融組織に参加する理由や過程を実証的な資料を用いて分析することは極めて重要な課題となる。本研究では,その一部を解明することができたと思われる。1994年,ファルドがリーマンブラザーズ社の経営の主導権を握ると,事業範囲を拡大し,証券業務や不動産事業に経営の重点を移した。この結果,リーマンブラザーズ社は過大なリスクを負うことになり,このことが経営危機に陥る一因となった。その過程を具体的に明らかにする。リーマンブラザーズ社が経営破綻するに至った際に,米国の連邦準備銀行は救済の手を差し伸べなかった。この理由をバランスシートなどの数字を用いて実証的に明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により,必要な資料が予定通り入手できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ハーバード・ビジネススクールで入手したリーマンブラザーズ社関係の資料の分析を進める。
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Causes of Carryover |
今年度が最終年度となる。書籍購入を考えている。
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