2017 Fiscal Year Research-status Report
日系企業の広報・コミュニケーション機能の展開と効果的遂行に関する実証研究
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16K03803
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮部 潤一郎 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 研究員 (60374641)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コーポレートコミュニケーション / 広報マネジャー / 企業内キャリア / プロフェッショナリズム / 戦略実行 / 広報組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、本邦企業の広報・コミュニケーション活動がどのように機能しているかを、この活動を所管する社内組織と担当する人材に注目して解明することを目的にしている。これまでのデータ分析から明らかになった本邦企業の広報マネジャー(広報部門長、広報担当役員)の特性を踏まえて、企業における広報・コミュニケーション機能が如何に実現されているかを詳細な聞き取り調査で把握する。初年度には現役および過去に広報マネジャー経験を有する企業幹部に対する聞き取り調査を実施した。本年度は引き続き広報実務家へのヒヤリングを継続しつつ、より広い視角からのアプローチを模索するために研究協力者とのディスカッションと組織論、人的資源管理論、リーダーシップ論などの関連領域の先行研究の探索と検討を進めた。 また、日本の研究者を代表して参画しているアジア太平洋地域23カ国の広報実務者を対象とした大規模調査(Asia-Pacific Communication Monitor)の第2回調査が2017 年6月に実施され、年末に結果が利用可能となった。この調査の設問中に、日本の広報の普遍性と特殊性を考えるに意味あるものが含まれており、この結果も踏まえて仮説的な結論を導出した。 以上の研究活動の中間的成果としての報告を、2018年3月のInternational Public Relations Research Conferenceにおいて行った。本邦大企業に特徴的な人的資源管理の下で展開される広報・コミュニケーション活動が高度にプロフェッショナル志向の欧米企業のそれに遜色ないとすると、広報機能にとって重要なことは広報技術か自社業務に関する深い理解かという問いには意味がある。IPRRCでの発表では、この点を仮説的な結論として提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のとおり、当初計画の趣旨を踏まえて研究活動を展開し所期の成果を得た。 広報マネジャーとの意見交換、ディスカッションはあらゆる機会をとらえて継続した。また、Asia-Pacific Communication Monitorの実施やIPRRCにおいて、欧米の多くの広報研究者と意見交換を行なった。このことがIPRRC報告の仮説的結論を導き出す際の整理につながった。観測事実の解釈のレベルから一歩進んで、一つの代替的モデルを提示できる可能性が見えてきた。 本研究の根幹のデータとしてこれまで構築してきた人事異動データに関して、カバレッジを20年にするべく追加的に1995年からのデータ収集作業を行った。また、同時に日々の研究活動の一環としてデータの追加作業を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度である2018年度では、2017年度の仮説的結論の検証を進め、広報活動に関する代替的組織モデルの提示を試みたい。その成果を論文として2019年3月のIPRRCで報告することを目標としたい。 そのために、改めて幅広く関連領域での先行研究を確認して理論的枠組みの精緻化を図るとともに、集中して広報マネジャーの聞き取り調査を実施する。 当初計画では企業の広報部門に対するアンケート調査を予定していたが、聞き取り調査を継続して詳細な定性情報の蓄積に努めた方がより効果的と判断している。また、日常的な広報活動の実態を把握するために聞き取り調査とは別に複数社のケーススタディを実施できないか模索中で、年度内に実現したいと考えている。
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Causes of Carryover |
67,320円の次年度使用額が生じた。主として旅費の使用に際して可能な限り事前の計画を確定して安いチケットを確保するなど、節約に努めたために生じた。次年度使用額は、文献資料費として有効に使用する予定である。
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