2018 Fiscal Year Research-status Report
CSRアプローチの企業利益最大化の戦略的意思決定パターンとそのメカニズム
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16K03808
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
高岡 伸行 和歌山大学, 経済学部, 教授 (90304922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小沢 浩 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (40303581)
原田 裕治 摂南大学, 経済学部, 准教授 (70313971)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | CSR / 社会的責任ビジネス / 経営目的と意思決定 / 企業の価値創造様式の多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究実績概要は以下の通りである。 まず分担者が以下の2点の課題に寄与する研究成果を研究論文・学会報告等の形で発表した。第一に経営行動の多様性を把握するための国別,産業特性,文化特性などのコンテクストと株式会社のあり方(意思決定と行動)との関係性について,第二に当該経営行動のパフォーマンスを把握,可視化するための経営分析手法についてである。 CSR(corporate social responsibility)指向の経営行動は株主価値を単元的目標にした価値最大化を必ずしも肯定・追求しない。株主価値,それを前提とした企業価値の最大化を指向するにしても,当該目標とは別の諸目標とのバランスを図る。第一の研究成果は,株式会社形態の企業組織の意思決定,経営行動に与える外形的要因の重要性を説明する理論的示唆を提起し,第二の研究成果は同一コンテクストにおける類似の経営行動を比較し得,その意思決定特性を差異化する論理を見出し得れば,当該経営行動に影響を与える経営特性(内生的要因)の分析・把握に寄与する。 研究統括者は分担者の研究成果をCSR指向の経営意思決定特性の考察に統合するための概念・枠組み整理を行った。また研究計画の中で遅行していたCSR指向の経営行動の国際比較を行うための準備作業の一端を,海外研究協力者との共同研究論文として学術誌に投稿し,掲載決定の通知を得た。 30年度の研究活動の成果の要点は以下の通りである。CSR指向の経営行動は多様な諸ステークホルダーとの事業・企業への巻き込みを必然とする。企業と諸ステークホルダーとの特定の関係性を分析対象とし,その関係体の維持・発展をめぐる意思決定がCSR指向の企業利益最大化の意思決定特性の鍵要因となるという含意である。この含意は本研究のこれまでの成果を統合すると同時に理論定式化に向けた枠組みとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各自設定したエフェートの範囲内で,各自および共同の研究時間,打合せ・議論等の時間を比較的確保し得た為。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,CSR(corporate social responsibility:企業の社会的責任)を価値創造に関する理論として捉え直す作業を中心に進める。既存のCSRに関する諸見解は当該理論を主に規範的,記述的研究アプローチの研究として位置づけてきた。そうした既存の理解を超えて,CSRが経済的・社会的便益を含む価値創造のあり方を探究する議論であることを明らかにし,そこでの価値創造パターンを指導する意思決定原理を特定することで,本研究の主題である「CSR指向による企業利益最大化の経営意思決定」を体系化する。 まずCSRを価値創造論と位置づける枠組みやパースペクティブを整理し,31年度前半中に学会報告へのエントリーを行う。また当該概念整理に基づき仮説設定を行い,学会報告での批判,コメントを参考に,仮説をブラッシュアップし,2016年度に実施した,日本の地方中小企業を対象としたアンケート調査のデータを活用し,パイロット的に実証分析を行う。 31年度後半,当該実証分析結果まとめた論文を作成し,海外の学術雑誌に投稿を目指す。また実証研究の結果を踏まえ,学会報告内容を発展させ,学術論文を作成し,国内の学術誌に投稿することを目指す。
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Causes of Carryover |
以下の2つの理由による海外出張旅費の執行計画を変更せざるを得なくなったため。第一に,海外研究協力者および研究代表者の都合により,相手国における滞在日程を短縮したこと,第二に海外研究協力者が日本国内の研究機関での短期研究研修の機会を取得し,日本国内において研究打合せを行えたこと,である。 使用計画としては主として海外研究協力との打合せ及び論文作成のための渡航費用に用いる。
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Research Products
(7 results)