2016 Fiscal Year Research-status Report
海外現地子会社における組織アンビデクステリティの有効性についての研究
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16K03821
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
青木 克生 明治大学, 経営学部, 専任准教授 (20318893)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Olcott George 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (80751552)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際経営 / グローバル戦略 / グローバル人事 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内調査については,研究分担者であるOlcott氏と伴に自動車,電機・電子,サービス関連企業におけるグローバル戦略と人材育成についてのインタビュー調査を展開した。具体的にはトヨタ自動車,デンソー,日本板硝子,日立製作所,ソニー,富士通,第一生命保険,JTといった企業における人事,あるいは経営企画担ダイレクターを対象とし,計10名に対するインタビュー調査を実施した。結果,グローバル戦略実施における本社の役割,子会社へのガバナンス,グローバル人事制度,グローバル・タレントの育成といった点で大きな知見を得ることができた。なおインタビューデータはケーススタディで使えるように全てテキスト化してある。 海外調査については,中国丹陽市にある中国系現地企業Tong Mingにおいてインタビュー,工場観察を展開した。この調査は,コンサルタントとしてこの企業にトヨタ式改善を指導していた村岡氏による協力の下で実施された。工場長,改善担当管理者,エンジニアを対象として計7名に対するインタビューが実施された。日本的方法と中国的慣習という異なる二つのファクターをいかにマネジメントするかという点で大きな知見を得た。 研究成果発表としては,2016年8月に実施されたAcademy of Management Annual MeetingにおいてManaging the productivity dilemma: How Toyota develops supply chain ambidexterityと題する論文の報告がなされた。当論文は,Operation Management によりBest paper Awardが受理された。この成果は,Academy of Management Best Paper Proceedingsとして出版されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画においては,2016年度では「文献研究をベースに組織アンビデクステリティ概念を発展させつつ,実態調査へと向けてその概念をベースとした調査フレームワークの構築を進めていくこと」ということが主な目的とされていた。 まず文献研究についてはAcademy of Management Review, Organization Scienceといった主要ジャーナルにおけるambidexterityに関連する論文はほぼ全て収集され,本研究との関連性を念頭に置きつつ,包括的なレビューが実施された。それと同時に,Journal of International Business Studiesといった国際経営関連のジャーナルからも関連する論文を収集し,レビューを実施した。その結果,ambidexterity概念に関わる研究のほとんどはイノベーションと組織学習を主題として論じたものであることが明らかとなった。ここから,institutional logicやhybrid organizationといった別の概念を用いた理論化の可能性という新しい課題を見出すことが可能となった。 調査フレームワークの構築については,トヨタ,デンソー,日立など計8社に対して実施されたインタビュー調査の結果から,「グローバル戦略の構築における集権化と分権化のバランス」,「グローバル人事制度・人材育成制度の役割と課題」という2つの大きな研究焦点を見出すことが可能となった。特にインタビュー調査の結果から,集権化に重きを置いているトヨタと分権化に重きを置いている日立という形で,対照的なパターンをケースサンプルから見出すことが可能となった。この対照性は,会社の置かれている環境,とりわけグローバル競争状況と大きく関係することが予想される。今後は,この点をさらに掘り下げていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の方策として,まず「組織アンビデクステリティ概念の発展と定性的調査に適したフレームワークの提示」という第一の課題については,「組織アンビデクステリティ」概念の拡大解釈と国際経営分野への適用という点に軸足を移していく予定である。すでに述べたように既存の組織アンビデクステリティ研究は,イノベーションと組織学習に焦点を絞ったものが多く,国際経営分野への適用事例はあまり多くはない。本研究では,アンビデクステリティを本社ベースの方法(戦略形成,人材育成,人事制度など)とローカルベースの方法(海外子会社が立地する現地で有効と思われる方法)との間の最適なバランスの追求という形で拡大解釈し,本社・子会社関係のマネジメントにより適した形でフレームワークを発展させていくことを予定している。これは第二の課題として挙げられていた「組織アンビデクステリティに依拠した海外現地子会社経営の理論を発展」という点とも大きく関係している。 さらに第三の課題として挙げられていた「海外現地管理者を育成するための教育プログラムの構築」という点については,今後とも国内外のインタビュー調査をベースに,分担研究者のGeorge Olcott氏と共同でその可能性を追求していく。研究代表者の青木は,現在滞在中のCardiff Business Schoolにおいてビジネスマン向けMBAプログラムの構築に深く関与しているManeesh Kumar氏とも連携を図っており,プログラムに参加しているGEやOlympusといった企業に対する訪問もすでに実施している。 最後に研究成果の公表についてであるが,当初の予定通り,引き続き国際学会への報告と国際ジャーナルへの投稿を精力的に実施していく。
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Causes of Carryover |
52,226円の次年度使用額が生じることとなった。その主な理由は,当初予定していたイギリス国内での調査が4-5月へと変更となったことが主な理由である。変更となった一つの理由は研究分担者であるGeorge Olcott氏が取締役会への参加などで3月初旬までの渡英が困難となったことが挙げられる。また研究代表者の青木も国際ジャーナルへの書き直し論文の投稿などで2-3月初旬は多忙を極めることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この予算については,4月13日のDenso Manufacturing UK(Telford),5月3日のHitachi Rail (London),5月4日のToyota Motor UK (Derby)への出張,インタビュー調査で使用される予定である
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Research Products
(3 results)