2017 Fiscal Year Research-status Report
業界別・主導権別のSCMのシステム特性に関する理論的・実証的研究
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16K03835
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
玄野 博行 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30726740)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サプライチェーン・マネジメント / 流通チャネル / 戦略 / 企業間協働(組織間関係) / 部門間協働(内部組織) / パフォーマンス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、平成28年度の研究において示唆されたことを踏まえつつ、更なるデータを収集するために、平成28年度と同様に文献調査と企業へのインタビュー調査を中心に実施した。特にインタビュー調査については、平成28年度においてインタビュー対象であった企業4社(製造業者2社、流通業者2社)に対しても引き続きインタビュー調査を実施しつつ、別の企業として新たに4社(製造業者2社、流通業者2社)を対象に実施した。 以上の取り組みにより示唆されたことは次の点である。①部門間活動においては、いかにして協働を構築することが重要であるかが示唆される。②業界別・主導権別といったより細分化したうえで分析してみた場合にいかなる結果が得られるのかについては課題が残る。すなわち、取り扱う業界及び主導者が違えば分析の結果も異なるということが示唆される。③たとえ企業間協働の程度が高くても、部門間協働の程度が低ければパフォーマンスの向上には結びつかない。すなわち、他者との意義ある協働の成否を決めるのは、とりわけ競争優位への貢献という視点に立つならば、つまるところ自社内部であるということが示唆される。④多次元的属性としてのパフォーマンスに対してどのような次元のパフォーマンスを捉える必要があるのかということの重要性が示唆される。すなわち、取り扱う業界及び主導者が違えば、捉えるべきパフォーマンスの次元にも注意すべきであるということである。⑤部門間の協働について考察する際には、どのような部門間関係に焦点を当てるかによってパフォーマンスへの影響が異なるということが示唆される。すなわち、どの部門に意思決定の権限を与えるのかによって、パフォーマンスへの影響も異なってくるという解釈も可能となる。⑥部門間・企業間協働に関わる観測変数をどのように捉えるのかについて注意する必要があることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究が掲げている3つの問題提起、①サプライチェーンにおける中核企業が、他の企業との間に作り出している諸関係にどのような影響を及ぼそうとしているのか、②現実の状況を捉えるうえで、従来の視点がどのような点で解像力が不十分なものとなっているのか、③その不十分性を克服するためにどのような概念装置が有用であり、それらをどのような方向で発展させることが必要かのうち、平成29年度は当初の計画通り、上記③について本格的に取り組む予定であった。具体的には、以下の研究項目を実施する予定であった。 第1に、どのような概念装置が有用な足掛かりとなり、それらをどのような方向で発展させることが必要かを明らかにすることである。この研究項目は、本研究における分析枠組みと分析モデルを構築する際のデータとすることを目的とした。 第2に、業界別・主導権別のSCMのシステム特性に関する分析枠組みと分析モデルを構築し、そしてその実証分析を進めていくことである。この研究項目では、理論研究をさらに発展させると同時に、そこから構築した分析枠組みと分析モデルをベースとした企業アンケート調査による実証研究を行なう予定であった。その目的は、業界によって異なるSCMの展開に関するシステム特性と、誰がシステムにおける中核企業になるかによって異なる主導権別のシステム特性を明らかにすることであった。 しかし、平成29年度においては、上記の研究実績の概要において記述したように、企業アンケート調査による実証研究を行なうに至っては様々な研究課題が残ることになった。すなわち、業界別・主導権別のSCMのシステム特性に関する分析枠組みと分析モデルを構築するには、まだまだ精緻化する部分が残っていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究が掲げている3つの問題提起、①サプライチェーンにおける中核企業が、他の企業との間に作り出している諸関係にどのような影響を及ぼそうとしているのか、②現実の状況を捉えるうえで、従来の視点がどのような点で解像力が不十分なものとなっているのか、③その不十分性を克服するためにどのような概念装置が有用であり、それらをどのような方向で発展させることが必要かのうち、今後は上記③について本格的に取り組んでいきたい。具体的には以下の研究項目を実施する予定である。 業界別・主導権別のSCMのシステム特性に関する分析枠組みと分析モデルを構築し、そしてその実証分析を進めていく。この研究項目では、理論研究をさらに発展させると同時に、そこから構築した分析枠組みと分析モデルをベースとした企業アンケート調査による実証研究を行なう。その目的は、業界によって異なるSCMの展開に関するシステム特性と、誰がシステムにおける中核企業になるかによって異なる主導権別のシステム特性を明らかにすることである。 ただ、業界別・主導権別ということになると、膨大なサンプル数が必要となることが予想されるため、企業アンケート調査による実証研究は遅延する可能性がある。そのことを踏まえて、場合によっては企業アンケート調査による実証研究を断念し、企業インタビュー調査を中心とする事例研究に変更する可能性もある。
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Causes of Carryover |
研究実施計画に記載したように、企業インタビュー調査と企業アンケート調査を実施する予定である。現時点では、企業インタビュー調査の進行は予定通りであるが、企業アンケート調査による実証研究については実施できなかった。そのため、次年度使用額が生じた。 このような理由に基づいて、次年度使用額の使用計画については、企業アンケート調査による実証研究をするための費用にあてる計画である。
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