2019 Fiscal Year Research-status Report
中国の新規株式公開市場における過小値付けの要因に関する包括的研究
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16K03839
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
船岡 健太 九州産業大学, 商学部, 教授 (30615357)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 新規株式公開 / ブックビルディング方式 / 過小値付け / 中国の株式市場 / 機関投資家 / 入札情報 / 私的情報 / センチメント |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果がEmerging Markets Finance and Trade 誌において掲載の運びとなった。以下に巻数等の掲載情報を含めて記す。
Kenta Funaoka and Yusaku Nishimura (2019), Private Information, Investor Sentiment, and IPO Pricing: Which Institutional Investors Are Better Informed? Emerging Markets Finance and Trade, Volume 55, Issue 8, pp. 1722-1736.
Funaoka and Nishimura (2019)では、中国のベンチャー企業向けの証券市場である創業板市場のデータを用いて、証券投資における私的情報の有用性に焦点をあて分析を行った。証券投資では、成熟企業に比して、公的情報の蓄積が少ない業歴の浅い企業において私的情報の価値がより高いと考えられる。このことから、若いベンチャー企業が数多く上場する中国の創業板市場を用いて(かつ創業板市場では機関投資家のタイプ別入札情報が開示されている)、どの機関投資家が私的情報を用いてリターンを得ているのかに関する検証を行った。投資家の合理的行動として、プラスの私的情報を有している際は目一杯の株式購入を試みるであろうと考えられることより、購入可能株式数の上限で購入申込が行われた株式数の比率を私的情報の保有度合いを示す代理変数として計量分析を実施したところ、証券会社のその比率がリターンに対して最も有意な影響力をもつというエビデンスを得た。この結果の解釈については、プライシングについて権限を有している主幹事証券会社と他の証券会社の共謀に関する可能性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果が学術誌へ掲載されたこと、および次の研究論文に取り組んでいることを理由としている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のFunaoka and Nishimura (2019)の貢献は、購入可能株式数の上限で購入申込が行われた株式数の比率が、リターンに対して有意な影響をもつというエビデンスを提示したことにある。しかし、同研究では、株式数の情報のみであり、株式価格(ブックビルディングにおける需要申告の価格)の情報については考慮されていない。現在は、価格の情報を分析に組み込めば分析結果の頑健性がさらに増すと考え、研究を進めている。
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Causes of Carryover |
参加予定であった研究会がコロナウィルス感染拡大により延期となったことにより旅費の一部支出が未発生となったため。この残額については、延期後の研究会出席に必要な旅費に充当したいと考えている。
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