2016 Fiscal Year Research-status Report
戦前期3組織の内部労働市場分析ー人事データを用いた比較研究ー
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16K03865
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
川村 一真 山口大学, 経済学部, 准教授 (20634736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 聡 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (00346248)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 内部労働市場 / 賃金 / 昇進 / 企業史 / 人的資源管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は戦前の3組織(鐘淵紡績(鐘紡)・兼松・東京市役所)の内部労働市場の実態を推定し,同時期の他企業や戦後と比べてどのような特徴が見られるのか明らかにすることを目的としている. 研究初年度である平成28年度は,1.後の統計分析の基礎となるデータベースの作成を行った.その結果鐘紡と兼松に関してはあらかた完成した.東京市役所については『東京市職員銘鑑』と『東京市職員録』に基づき1941年の全職員の入力が完了したが,5000名に達する規模であるほか,データ入力は学部生が行ったので適切に入力されているかどうかの確認が不可欠であり,統計分析に耐えうるデータベースに仕上げるには若干の時間が必要である. このほか,東京都中央図書館で東京市役所の人事システムに関する文書の収集など,研究分担者の藤村は資料調査を進めた. 以上と並行して,2.鐘紡の人事制度の統計分析を行った.第一に戦略との適合性との観点から賃金制度の特徴を推定した.その結果(1)工員との良好な関係を築き,長期的観点からの労務管理を促進する職員への勤続インセンティブの存在,(2)各工場の成員が一体となって働くことを促すグループインセンティブの存在,(3)同一製品の生産を担当する工場間の情報共有を促進する工場長に対するインセンティブ,(4)本社と工場長との間のエージェンシー問題を緩和するための成果連動給の存在を明らかにした. 第二に,構造方程式モデリングを用いて,賃金だけではなく社内資格と職務も含めた包括的な分析を行った.戦後との比較を念頭に置き,「学歴主義」「学校歴主義」の観点から分析を行った結果,(1)先行研究で述べられている学歴主義,学校歴主義的な処遇は見られない,(2)戦後の「遅い選抜」とは対照的な競争構造,(3)職務も決定要因に含めた基本給,(4)昇給に対する勤続効果の小ささ,が明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,28年度は資料収集とデータベースの作成を行う予定であった.
必要な資料の収集は28年度でほぼ完了している.これに加えて,データベースの作成もまずまず順調である.なぜならば,既に鐘紡と兼松については,人事制度の分析を行うのに必要なデータベースは完成している.東京市役所については,そのデータの基軸となる1941年の職員の入力を終えることができた.
以上のような作業に加え,28年度は計画を前倒しして鐘紡の統計分析も行っており,一部の結果は既に学会にて報告を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
第一に東京市役所のデータベースを完成させることである.これについては,既に入力が完了した1941年に在籍していた職員の処遇の経歴を前後に伸ばすことが今後の課題として残っている.
第二に,完成したデータベースを分析し,その結果を学会報告や論文投稿という形で発信することである.鐘紡については既に統計分析がほぼ終わり,29年度の学会報告を経て1つの論文にまとめる予定である.東京市役所については,データベースの作成と並行して予備的な分析を行う予定である.データベース完成後の本格的な分析に先立ち,変数間の関係にどのような傾向が存在するのか直観を得たり仮説導出のための分析である.
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Causes of Carryover |
主に謝金の部分で当初の計画通りの予算執行ができなかった.その主な理由は,データ入力のために雇用している大学生たちが,個人的な都合を原因に,計画通りに仕事を行うことができなかったことである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はデータ入力のための謝金として用いる予定である.データ入力の遅れを取り戻すためにも,必要があれば人員を増加させることも考えている.
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Research Products
(2 results)