2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03873
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小沢 貴史 大阪市立大学, 大学院創造都市研究科, 准教授 (50367132)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 航空機エンジン / 共同開発 / 販売競争 / 修理・オーバーホール / 社会情緒資産 / 企業家志向 / リーダーシップの分業 / 社会ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、衰退化と再活性化のメカニズムに関する密な記述を図る上で、その方法論を習得するべく、内容分析や、ヒストリカル・エスノグラフィーなどに関する文献のレビューを行ってきた。市場で起きた出来事を、後知恵の視点で説明するのではなく、「その時、何が起こったか」を、当事者の観点で捉えるための研究アプローチを検討してきた。 そして因果連鎖を丹念に追い、深く積み上げるためのアプローチを実践するべく、航空機用エンジン市場と、航空機用エンジンの修理・オーバーホール市場を取り上げ、当該市場に関する公刊データの分析により、再活性化の要因を特定化し、それらのメカニズムに関する密な記述を行ってきた。事例として取り上げた市場に関する動向や企業行動、統計などの公刊データをはじめ、新聞や雑誌の記事を広く集め、出来事の連鎖を記述してきた。また出来事の連鎖の背景にある在来企業群の戦略や、その意図を探ってきた。その成果は、平成30年度に行う予定の学会発表や、投稿論文の形になるものと期待している。 また衰退市場や再活性化市場の在来企業群を探ると、ファミリービジネスが多く見受けられることが確認できた。そこでファミリービジネスを題材に、在来企業群の永続性について、経営行動科学という観点からの考察を行ってきた。いわばファミリービジネスの永続性については、1本の論文にまとめた。この論文は、平成31年度以降となる、本研究の次のステップの研究テーマの醸成という意味合いも包摂している。社会情緒資産や事業継承者のキャリア、企業家志向、リーダーシップの分業、社会ネットワークなど、在来企業群の中でもファミリービジネスの研究領域において、十分に議論できていないポイントを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
殊の外、新聞・雑誌記事の内容分析と、論文の執筆に時間を割いてきた。よって当初の計画よりも、フィールドに出て、定性調査を重ねたり、研究成果の学会発表などへの時間が十分に避けることができたわけではない。その分、平成29年度に割り当てられた予算額の100%の執行が行えたわけではない。平成29年度の執行残額は、平成30年度に繰り越すことで、平成30年度の研究計画の達成に臨みたい。 さりとて、1本の論文の執筆と、航空機用エンジン市場に関する新聞・雑誌記事の内容分析の進展が実現したことは、評価に値すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、衰退化と再活性化のメカニズムに関する密な記述を図る上で、その方法論を習得するべく、テキストマイニングなどに関する文献のレビューの不十分な点を補いたい。 また航空機用エンジン市場以外にも、衰退市場と再活性化市場について、収集した公刊データや新聞・雑誌記事、インタビュー記録や内部資料の文章からなるデータを用いて、テキストマイニングの分析を行う(4ペア=8市場程度)。成熟や衰退、成功方程式、既定路線、認識/認めたくない、過敏、対処療法、原因療法、新規参入、回避、顧客志向、イノベーション、試行錯誤、失敗からの学習、希望、ビジョン、切磋琢磨、執念、低価格などの出現の頻度や共出現の相関、時系列で捉えた出現傾向などを解析する事で、衰退市場と再活性化市場の違いを見る上で有用な情報を取り出す。 本研究の成果を踏まえて、再活性化を遂げることのできた市場とできなかった市場とを分けるポイントはどこにあったのかについて考察する。売り手である企業群が何年くらい懲りずに・諦めずに顧客と向き合い続ければ再成長に転じることができるのか、および衰退市場からの転地の見極めをどのように行うべきか、などについて議論・考察する。 在来企業群が、どのように行動する事で衰退化を凌ぐべきか、衰退から再活性化に転換させるべきか、あるいは衰退化を未然に防ぐべきか、その戦略展開のあり方を提案する。そして業界特有の要因に左右されにくい、市場再活性化の本質に迫りたい。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、論文の執筆と、航空機用エンジン市場に関する新聞・雑誌記事の分析に専念した。その結果、データ・バンク機関の利用料は「その他」のの費目にて、予算額を大きく上回ることになった。その一方で、方法論を習得するべく行う予定であった、競争的創発プロセスのケース記述に関するレビューは十分に行うことができなかった。これに伴い、レビューに要する図書の購入を行っておらず、「物品費」が予算額を下回る執行状況となった。また、新聞・雑誌記事は専ら、データ・バンク機関の利用に依存していたため、市場や業界に関する動向・統計資料も入手に至っていない。 この辺りの書籍や資料の購入については、平成30年度の研究計画に盛り込むことで、遂行を果たしたい。合わせて平成29年度は、業界団体をはじめ、当該市場で活動を展開している企業群へのインタビューを行ったり、内部資料を収集したりすることができておらず、IC レコーダーの購入も行なっていない。よって平成30年度は、平成29年度の研究計画で未達な部分も遂行するため、平成29年度の繰越金と平成30年度の助成金を合わせて、研究活動に資する使用を実施したい。
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Research Products
(1 results)