2016 Fiscal Year Research-status Report
新興国における日系自動車企業の開発知の移転と協創の研究
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16K03876
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Research Institution | Sapporo University |
Principal Investigator |
中山 健一郎 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (50285227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植木 英雄 東京経済大学, 経営学部, 教授 (40146981)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経営学 / イノベーション / 製品開発 / 知識移転 / 日系自動車メーカー / 現地適応戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日系自動車メーカーの海外研究開発拠点の現地化程度、また現地開発ニーズの高い地域における製品開発(修正開発、リバースエンジニアリング対応)への部品メーカーの対応を踏まえ、知識移転のあり方について先行地域における開発現地プロセスとの対比研究をおこなう。従来研究は自動車メーカーの視点に偏っており、本研究は協創の視点から部品メーカーの開発知移転を人材育成と結び付けて考察する点に独自性がある。 北米、タイ、中国といった市場ではすでに修正開発を軸にした製品開発が進展しているだけでなく、周辺地域も含める形での開発の現地化要請が高まっている。しかし、新興国市場における競争優位構築には、現地市場に適した仕様開発、修正開発を踏まえた製品開発が重要になる。 本研究課題は、現地適応戦略、即時対応能力を高めるための開発知の移転、現地での人材育成、ネットワークレベルでの協創をどのように構築すべきなのかを主題とし、より具体的には日本企業の海外現地生産化が進展した1980年代以降、2010年代までを対象に自動車産業(自動車メーカー、主要部品メーカー)の開発現地化、人材開発に焦点をあて、環境適合のなかでのメーカー、サプライヤー間の協創関係を明らかにする。 平成28年度は、国内調査として国内主要乗用車メーカーのトヨタ、日産、ホンダ及び主要1次部品メーカーへのインタビュー調査のほか、自動車産業に関する資料調査を行った。また、海外調査としては、中国、タイにおける日系自動車メーカー及び主要1次部品メーカーの現地開発拠点への企業調査をおこなった。具体的には現地のR&D部門、経営企画室、商品企画室、マーケティング部門、人事部門へのインタビュー調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内調査では、国内主要乗用車メーカーのトヨタ、日産、ホンダ及び主要1次部品メーカーへのインタビュー調査のほか、マツダへの調査も行った。平成29年度調査でのメキシコ調査の1つにマツダの調査を組み入れていたことから追加調査を行った。国内調査では、海外生産拠点と本国工場との2010年代以降の変化を中心に、国外調査については、中国、タイへの集中調査を行った。日産系の部品メーカー、ホンダ系の部品メーカーほか、トヨタ、日産の現地工場を調査した。タイでは、自動車ディーラー調査ほか、ホンダ、ホンダ系の部品メーカー、ホンダ、日産の現地開発拠点を中心に調査をおこなった。 平成28年度調査からは、タイは日本の開発拠点からのコントロールを中心に、現地での一定範囲での修正開発が許容されている一方、中国では現地での修正開発にかかる権限移譲の範囲は広く、開発現地化や開発人材の育成に意欲的な側面が全体的に観察された。 これらの観察事実は平成29年度以降の調査に大きな示唆を与えるものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度調査では、北米、南米の調査に重点が移る。治安の悪い南米のメキシコ、ブラジルが主たる対象地域となる。特にメキシコは近年、目覚ましく自動車産業の集積が進み、先行進出の日産を筆頭にマツダ、ホンダの現地生産化が進展している。もっともメキシコは北米市場を取り込んだ生産拠点としての位置づけを有するものの、北米以外の輸出拠点としても今後、拡大していく様相があり、今後ますます北米の開発拠点、日本の開発拠点との関係性の中で開発知の蓄積が進むことが期待される。またブラジルについては国内市場が世界市場の動向とは異質のエタノール車の普及が進展していることから、すでに現地での修正開発がメキシコ以上に進展している可能性が高い。 平成29年度調査ではこれらを背景に、日本―北米―南米の開発知移転の動向や実態を明らかにしていく予定である。 しかし、以下の課題も残る。 1つは、平成28年度海外調査では、現地開発拠点の技術者に対する人材育成・開発に関するアンケート調査の実施を予定していたが、これに関しては未達成の状況にある。2つ目は、研究会開催が当初想定していた以上に実施が遅れる見込みになることである。 平成28年度に予定していた調査は平成30年度に再度、アジアでの調査を試みることとし、また研究会については、平成29年度の調査結果を踏まえて、出張期間中の研究会のみならず、成果のまとめを意識した研究会が出来るよう努力したい。
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Causes of Carryover |
メキシコ、ブラジルは共に治安情勢が悪く、特にブラジルへの渡航費用が高騰している。また、H29年度の海外調査において、メキシコーブラジル間の調査旅費が当初計画以上にコストがかかることが判明したため、その旅費を前年度分から繰り越し手当するために対処を行った。そのため旅費項目を前年度繰り越し8万円を発生させた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度計画において、代表者はメキシコー米国調査を行い、研究分担者はメキシコーブラジル調査を行う予定である。
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Research Products
(6 results)