2019 Fiscal Year Research-status Report
日本型買収プライシングモデルの構築―目的分類による買収プレミアムの標準モデル開発
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16K03877
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
文堂 弘之 常磐大学, 総合政策学部, 教授 (30337290)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | M&A / TOB / プレミアム |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の内容は、これまで作成してきた分析データのうち2002年から2013年までのTOBサンプルを、先行研究には存在しない新たな3つのサブグループに区分(ハイプレミアム(プレミアム50%超)、ノーマルプレミアム(プレミアム0%以上50%以下)、ディスカウント(プレミアム0%未満)して、買収目的、取引関係、株式買い付け方針についての諸変数と買収プレミアムの関係を、差の検定および回帰分析を用いて分析した。 主な分析結果として、まずプレミアムで区分しない場合の結果と、上記の区分基準による各サブグループにおける結果が必ずしも一致しないことが明らかになった。これは、このテーマに関する今後の研究においては、本研究のようなプレミアム水準による区分法が必要になるということを意味する。 次に各サブブループにおける主な結果として、まずハイプレミアムにおいては、買付戦略変数には強い有意な関係は見いだせなかったが、買付者とターゲット企業との間の事業上の関係の存在とプレミアムとの間、および両社の従業員における結びつきの存在とプレミアムとの間において、有意な負の関係を見出すことができた。これは、TOB後において新たな事業上および人的な関係を作り出す場合にプレミアムが高いこと、すなわち高いプレミアムの源泉にこれらのシナジーが影響していることを示唆している。 ノーマルプレミアムにおいては、両者におけるTOB前の事業上の取引関係の存在とプレミアムの関係が有意に負の関係が検出された。これは、このサブグループにおいてはシナジーがターゲット企業のTOB発表前の株価にすでに反映されている可能性を示唆しうる。 ディスカウントにおいては、他のサブグループと異なり、事業上の関係とプレミアムに有意な正の関係があり、これはプレミアム案件よりもディスカウント案件のほうが事業上のシナジーを生みやすい可能性を示唆しうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、作業を進められており、論文を作成することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果を振り返り、解釈に不確定な部分があるものについて、より詳細な分析を行うための追加的分析を行う。と同時に、研究結果を論文等で発表する。
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Causes of Carryover |
再分析のためのデータ関連費用および分析ソフト・PC等分析作業機器、データ保存器具購入費用、分析作業外注費用、英語論文のためのネイティブチェック費用、研究成果発表のための旅費、図書・雑誌等の資料購入費用
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