2017 Fiscal Year Research-status Report
企業のオープンイノベーションの場となる産学共同研究に関する研究
Project/Area Number |
16K03878
|
Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
西尾 好司 日本工業大学, 技術経営研究科, 教授 (50711602)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 産学連携 / 大型共同研究 / 知識創造の場 / 自己組織化 / オープンイノベーション / 研究リーダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、産学共同研究が企業のオープンイノベーション活動を推進する「場」として機能するために、大学や企業という組織、教員や企業の研究者が果たすべき役割を明らかにすることを目的に、大阪大学共同研究講座制度及び協働研究所制度などの、企業が大学に研究拠点を設置する大学が独自に創設した産学連携制度の事例研究をベースに実施している。今年度は、継続して大阪大学の対象事例の共同研究講座や協働研究所について、関係者へのインタビューを行った。さらに、新たに大学に企業の共同研究拠点を設置する他大学の類似の制度について、文献調査及び関係者へのインタビューを開始した。 大阪大学の事例研究からは、企業から派遣される研究代表者が、大学との共同研究や大学で研究を行うことに対する自身のビジョンを持っていること、大学において事業化に向けた研究開発環境の構築などをやり遂げる能力など、企業から大学の研究室に派遣される共同研究者とは異なるマインドや行動の必要性が明らかになった。また、他大学の類似の制度に関する研究からは、企業派遣研究者の役割や学内での身分が大阪大学の制度と異なることが、企業派遣研究者の活動に影響を与えることが示唆された。 つまり、企業から派遣される研究代表者が、大学に設置した共同研究拠点において、大学に企業と同じ研究開発環境を構築するのではなく、自社での研究開発とは違う研究開発を進めることが必要となる。そのためには、研究成果を事業化につなるために、大きな方向性としては企業戦略に則るが、大学という企業とは違う環境下で、企業派遣共同研究代表者が、事業化に関する自身のビジョンを実現する自己組織化的な活動を推進していくこと、さらにそのような行動を認める研究開発環境を大学と企業が一緒に構築していくことができるようにすることが求められる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のベースとなる大阪大学の事例研究では、企業が派遣する研究代表者のマインドや行動力、受け入れる大学の企業との連携に対する戦略や制度が、大学での企業側のオープンイノベーション活動の重要な要因であることが明らかになった。また、大学の戦略や制度については、他大学の事例研究からもその重要性が示唆された。以上から、ほぼ予定通りに研究を進められていると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度として、企業派遣研究代表者が、積極的に学内や他社との関係性を拡大して、オープンイノベーション活動を活発にしていくために、企業派遣研究代表者の役割や求められる行動、大学の制度や企業のビジョンの役割を明らかにする。経営学で取り上げられている「場」の理論を用いて、オープンイノベーションの「場」を生み出し、発展させ、さらに作り変えていくことで、企業のイノベーション活動に新たな力を与えるようにするための「場」を機能させるという観点からアプローチする。研究成果については、国内外で発表し、特に海外研究者との議論を行う予定である。 なお現在、産学共同研究の大型化を国や企業が推進しており、本研究のような大学に企業の協同研究拠点を設置する事例だけでなく、大型産学共同研究プロジェクトが機能するため要件についての研究の必要性も増していることから、関係者へのインタビューに際して、大型の産学共同研究プロジェクトのマネジメントに関する質問を追加して、本研究の成果を活用して次の研究へ展開していくための活動も実施していく予定である。
|
Causes of Carryover |
対象事例の関係者へのインタビューに関して、本研究以外の理由で関係者と面談する機会があり、この機会を利用してインタビューができたため、当初の予定よりも国内旅費を必要とせずに研究を実施できた。次年度は、最終年度として、当初計画に追加して対象大学を増やして研究の成果を充実させ、さらに海外向けの成果発表の準備を充実させる予定である。
|
Research Products
(1 results)