2016 Fiscal Year Research-status Report
経営視覚による間主観的環境認識の形成に基づく起業アイデアの創造
Project/Area Number |
16K03881
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
吉田 猛 青山学院大学, 経営学部, 教授 (00200999)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境認識 / 経営視角 / 起業者学習 / 学習タイプ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大目的は、これまでの環境の認識のあり方を問い直し、既存の研究のように客観的認識かあるいは主観的認識かのいずれか一つを選択するのではなく、これらを包含して経営主体の環境認識のあり方を総合的に捉え直そうとするものである。 今年度は、この目的を達成するための前提の一つとして、主体が環境を捉えるために必須となる感覚的要素、その中で特に重要となる視覚に、焦点を合わせて、経営学をはじめ、心理学、生理学、人間工学、社会学などの関連諸分野の資格に関する学術研究の資料収集とサーベイを行った。同時に、今年度のもう一つの目的である組織学習、組織認識そして起業者学習に関する理論的研究も進行させたが、こちらは起業者学習に焦点を絞って資料収集とそのサーベイを行った。 これら二つを総合的に検討した結果、通常視覚は認識主体の外部の現象や人間の活動に目を向けるのであるが、認識主体の内部すなわち記憶に対しても目を向けているのではないかという気づきを得た。また、それと同時に視覚は今ここに出現する現象や活動を捉えるだけではなく、過去の事象や記録に対しても注がれると考えることにした。結果、視覚の向き(外部と内部)および視覚が向けられる対象(現在と過去)という二つの次元を使って析出した四象限を基にこれまでの起業者学習理論を分類することが可能となった。この四つは、「現在・内部のレフレクション」「現在・外部のエフェクチュエーション」「過去・内部の想起」「過去・外部のアナロジー」である。その成果は、日本情報経営学会第73回全国大会において研究発表「経営視覚と組織の知識創造:エフェクチュアル知識創造を中心にしてとして」というテーマで報告を行った。ここでは四つの学習タイプの概要およびその中で特に起業者学習と関係の深いエフェクチュアル知識創造(エフェクチュエーション)に関して報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
認識主体の視覚に関しては、諸分野にわたって広く研究されているため、資料収集とサーベイにプロセスで、いったん収集を終えサーベイに進んだ。しかし、文献を読み進めていく途中で新たに重要な文献があることに気がつきその文献を入手するということを何回か繰り返したため、視覚に関する文献収集とサーベイにかなりの時間を要することととなった。 その結果、もう一つのサブ・テーマである認識や学習に関して、当初の目的であった組織学習や組織認識の領域まで文献収集とサーベイに取り掛かれず、起業者学習の理論だけに研究がとどまってしまい、今年度の研究目的の一部が次年度に回さざるを得ないという状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のようにやや計画より遅れているが、28年度末になって29年度の前半には組織認識論や組織学習論に関する資料の収集と整理およびサーベイを完了させることが可能という見通しが立ったため、29年度前半には28年度の研究計画をすべて終了させることが可能となる予定である。その成果を基に29年度の目的を達成できるように、研究の速度を上げ、特に29年度で重要となる「実証研究の理論的基盤の構築」を達成できるように努める。
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Causes of Carryover |
理由としては、物品費の費消が大幅に少なかったことがあげられる。第一の要因としては、視覚に関する文献の多くが、出費を要する書籍ではなく無料で入手できる論文であったためである。 第二要因としては、今年度の第二の目的としていた組織学習や組織認識に関する文献収集が先送りされ、その文献を購入する費用が翌年度に回さざるを得なかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度未購入であった組織学習および組織認識論の文献を購入すること、および起業者学習に関する文献の購入を増やすことで、次年度使用額をほぼ使い切る予定である。
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