2018 Fiscal Year Research-status Report
経営視覚による間主観的環境認識の形成に基づく起業アイデアの創造
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16K03881
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
吉田 猛 青山学院大学, 経営学部, 教授 (00200999)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経営視覚 / 注視領域 / ビジョン / 視野・視座・視点・視線 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は前年度に続いて経営視覚に関して複数の研究分野に渡る広範囲な文献調査を行うことで、第一にそこから経営視覚の定義を確立しその定義に基づいて、実証研究の核となる研究仮説を作り上げること、第二に定義と研究仮説に基づき質問票の構造の確定、個々の質問の精緻化、質問間の整合性の検証を行い質問票を完成させ、それを研究対象者に発送し回収した上で分析を終えることを予定していた。 しかし、第二の項目は終了させることができなかった。他方、第一番目の経営視覚の定義および核となる研究仮説の作成は完了することができた。まず、経営視覚の定義は、「事業を創造し、継続するという目的を有する経営体が、それを取り巻く外部環境から生み出された光刺激を把持する機能」とした。経営での光刺激とは、経営体に属する人間の視覚、そしてその視覚を補完や増強する器具や設備(カメラ、ビデオカメラ、動画や静止画を保存するあるいは編集する設備等)を通じて、得られた外界の刺激のことである。前年度では視覚は、視野、視座、視点・視線で構成されていることを指摘したが、この三点において経営体は人間や多様な器具や設備を利用しながら多くの光刺激の収集、分析、そして統合を行っている。 無限にある光刺激の中から視覚や視覚器具・設備によって、かつ経営上・業務上の関心によって、選び取られたものが視覚情報であり、その情報を既存の知識と接合して生み出されるのが視覚知である。視覚知は現在の刺激から作り出されており短期的な適応において重要な役割を果たす。他方、経営体は未来に向けて事業を継続しなければならないため、未来に向けて長期的な適応も必要となる。その際未来を見通せるようなビジョン(長期的な視覚知)が必要となる。そこで、核となる研究仮説は、「経営視覚はどのようにしてこの二種類の視覚知を生み出すのか」ということになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度では、研究実績の概要に書いたように、分野横断的かつ丹念に大量の文献の調査を実施したため、経営視覚の定義と核となる研究仮説の確立に思いがけず多くの時間を費やすことになってしまった。それゆえ、定義に基づき、そして研究仮説を証明するための、具体的な質問事項の作成と推敲、研究対象者に対して質問票の送付、そして返送されたデータの分析を終える時間がなくなってしまった。 計画通りであれば、上述した定義や研究仮説を基に、以下のような疑問に答えられるような質問事項を作成しなければならなかった;経営組織は、どのような光刺激を感知し、そこからどのような視覚知を作り上げているのか。視覚知の形成の方法によって短期的な適応はどのような影響を被るのか。また、短期的適応に欠かせない視覚知から長期的な適応に必須のビジョンをどのようにして創造していくのかなどである。さらに疑問を拡充しつつ、できうる限り早急に適切な質問項目を作成し質問票を完成させていくよう努める。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度において完成できなかった質問票の作成を速やかに進めていく。まず質問票の基盤となる研究仮説をより精緻なものとすること、次いで個々の質問事項を作成し内容を推敲することと質問間の整合性の確認を行い、質問票の構造を確定させることをできるだけ早く終了させる。また、完成した質問票は送付および集計に時間を要する文書による調査ではなく、ネットでの調査に変えて、実施する予定である。 また、調査対象者層は以下のように考え、絞り込みを行うこととする。経営視覚の定義や研究仮説などの基となる理論的な枠組みは、企業に属するすべてのメンバーに適用できるが、今回の調査ではメンバーを役員などの上級経営者層、中間管理者層そして一般従業員層に分けた上で、一般従業員層を対象とする。なぜなら、視野という面からだけを取り上げてみても、上級経営者は一般従業員に比べて、その担当するタスクの性質上目を配る範囲は広くならざるをえない。そのため、両者の間には必然的に範囲の領域に差異が生じてしまう。調査する際には調査対象者にはどの階層に属するかを回答してもらうことで職務の違いから生じる差異を分離できるが、今回の調査では、一般従業員層および下位の中間管理層を対象とすることで、できうる限り多数の回答を得、調査結果の精度を上げようと考えている。 また、ネット調査では集計に時間を要しないため、回答を得る期間を長くとることができ、さらに回答数を増やせるという利点がある。このようにして集計したデータを基に仮説を検証し、できるだけ早急に結果を論文にまとめることにしたい。
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Causes of Carryover |
前年度において質問票調査に関連する支出が、質問票調査が実行できなかったため、ゼロとなった。今年度において調査の実施に伴う支出が生じるため、残額は基本的にすべて費消することができる。 項目としては、ウェブ調査の実施と集計に対する調査会社への支払い、集計結果を分析するためのソフトウェアの購入、分析結果を学会報告するための旅費、および研究に役立つ報告がある学会に参加するための旅費に費消する予定である。
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Research Products
(2 results)