2017 Fiscal Year Research-status Report
戦略形成プロセスからみる新興国のイノベーション:日本企業の創発的グローバル戦略
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16K03884
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三嶋 恒平 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (90512765)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イノベーション / 戦略形成プロセス / グローバル創発戦略 / 経営資源 / 新興国 / タイ / インド / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究期間は3年間あり2017年度は2年目に相当した。研究計画では2017年度の成果目標として2つ設定した。第1に、ホンダやヤマハ発動機など日本のグローバル企業の新興国におけるイノベーションと経営資源の配分に関する情報の収集と整理であった。第2に、業界一位のホンダと二輪車産業の共進化を明らかにすることだった。これらの遂行に向け、ホンダといった完成車企業に加え、部材を生産供給するサプライヤーや販売現場であるディーラーや補修店への調査も行うこととした。さらにこうした調査データの考察やその理論化を進めるため、毎年国内学会で報告を行い、日本語論文を作成し、国内学会誌で掲載(2年で2本)を目指す、とした。 これに対して、2017年度の実績は下記の通りだった。まず、第1の目標についてはタイ、ベトナム、インドにおいて調査を行うことで進展を果たせた。この3カ国に進出するグローバル企業を中心に訪問することで各国間の産業発展の異同についても確認することができ、あわせて、そうした特徴のある各国市場に対してグローバル企業はどのような戦略で対応しようとしているのかも確認することができた。第2の目標についても上記調査を通じて考察を深化させることができた。特にタイ、インドにおいては日系を中心としたグローバル企業に加え、地場系企業への調査も積極的に行うことで、スピルオーバー効果を通じた産業の共進化の実態を確認することができた。 こうした実態解明を通じて(1)新興国におけるイノベーションと戦略形成プロセス、(2)日本企業のグローバル創発戦略、経営資源の配分、内部組織のありよう、(3)日本企業の能力構築と新興国の市場・拠点でのイノベーションの発現を明らかにした。これを踏まえ、研究実績に示したように国際学会での報告を2度行うことができた。そうした学会報告での議論を通じて、研究3年目に向け、考察を深めようとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績のとおり、実態解明については大きく前進させることができた。一方で研究計画では調査データの考察やその理論化を進めるため、毎年国内学会で報告を行い、日本語論文を作成し、国内学会誌で掲載(2年で2本)を目指す、とした。これに対して、2017年度の実績は、国内学会で1度、国際学会で2度、報告したが、国内学会誌での論文掲載を果たすことはできなかった。これはなぜなら、当初、国内誌に掲載の後、国際学会での報告とその後の論文執筆というプロセスを想定していたものの、国内雑志での掲載よりも国際ジャーナルでの掲載を目指し、そのために必要な国際学会を研究3年目ではなく2年目に前倒ししたためであった。これらを総合的に勘案すると、研究の進捗はおおむね順調に進展していると評価できるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は本研究の最終年にあたり、研究の総括が必要になる。研究計画において、3年目の2018年度の目標は戦略プロセス論における「業界を支配した企業は業界に支配される」という仮説(Bergelman,2006)の妥当性を新興国という戦略プロセス論にとってのフロンティアから検証し、戦略形成プロセスと新興国のイノベーションの関係性を巡る新たなモデルを示すこと、とした。さらにこの目標実現のため、国際学会で報告を行い、そこでの議論を通じて理論の深化に取り組み、その上で海外英文誌の掲載を目指す、ともした。 この計画を遂行すべく、2018年4月現在、すでに海外学会での報告を2回予定している。こうした海外での国際学会での報告とそこでの議論を深め、論考をまとめ、論文執筆を行う予定である。
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