2016 Fiscal Year Research-status Report
伝統工芸産業産地の地域革新と企業家活動の研究:先駆的組織間協働の事例を中心として
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16K03887
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
山田 幸三 上智大学, 経済学部, 教授 (40240014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 博之 滋賀大学, 経済学部, 教授 (20242969)
柴田 淳郎 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (10437452)
出口 将人 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40305553)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経営戦略 / 企業家活動 / 組織間協働 / ビジネスシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、主たる実績として、陶磁器産地で継承される伝統工芸技術を基盤として、産地商社と窯元との共同の商品開発で現在のライフスタイルに適合するように新たな焼き物を生産した有田焼産地の先駆的な組織間協働の事例と信楽焼産地の地域企業家の活動の事例、ならびに地場産業の存続を可能した彦根仏壇産業の経営と技能伝承のビジネスシステムの事例について調査を実施し、伝統産地の存続と地域革新の萌芽となりうる組織間協働との関係の分析を企業家活動の視点から試みた。 実地調査の第一次的な分析報告は、2016年7月16日開催の企業家研究フォーラム2016年度年次大会で上智大学山田幸三が「陶磁器産地の組織間協働と企業家活動」として、産地の商社と窯元による共同商品開発の事例について報告した。さらに、2016年10月8日開催の組織学会2017年度年次大会で、この調査研究をもとに、研究発表セッション「地域革新とアントレプレナーシップ」が開催され、山田幸三による「問題提起」で産地の自己革新におけるミクロの行動主体としての企業家の活動に注目する意義、および滋賀大学伊藤博之による「地域企業家のアントレプレナーシップ」でイノベーション推進の意志の基軸が何らかの形で地域性にある企業家に注目する意義が報告された。そして、ビジネスシステム論を基礎に、産地の存続の仕組みに焦点を合わせて俯瞰した論稿として、有田焼産地の従来の存続と新たな組織間協働の動きに関する、山田幸三「集積の中での切磋琢磨」、ならびに彦根仏壇産業の存続のビジネスシステムに関する、滋賀大学柴田淳郎「経営と技能伝承のビジネスシステム」を加護野忠男・山田幸三編『日本のビジネスシステム』に収録して公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビジネスシステム論と企業家論の基本的な文献をサーベイし、地場の伝統工芸産業の産地の存続とそれを可能にしてきたビジネスシステム、ならびに地域革新の萌芽となりうる新たな組織間協働に関する実地調査とその結果を取りまとめた研究報告を2つの学会の年次大会で合計3報告、ビジネスシステムに関する学術書に論稿2編を収録できたこと、ならびに美濃焼陶磁器産地の存続に関する調査研究も取り纏められ、平成29年度に学術雑誌に公刊される予定であることは、組織間協働と企業家活動に関する研究に一定の貢献ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
伝統工芸技術を海外や国内の現代的な生活に適合するよう変換した商品開発と、卸売商社主導の商品開発においてプロダクトデザイナーと伝統工芸事業のマッチングを試みた、地場の伝統工芸産業の産地における先駆的事例を調査し、外部組織との組織間協働を含めて伝統産地の地域革新と企業家活動の分析を試みる。 具体的には、有田焼陶磁器産地の追加的な調査研究、九谷焼陶磁器産地の実地調査、山中漆器産地の実地調査などに取り組んで結果を取りまとめたディスカッションペーパーの作成を行う予定である。
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Causes of Carryover |
共同研究者の内、滋賀大学の柴田准教授は、次年度に九谷焼陶磁器産地の実地調査に加えて、山中漆器産地の調査にも参加するために次年度使用額が生じている。滋賀大学・伊藤教授は、次年度に山中漆器産地の綿密な調査を実施する予定であるため、また名古屋市立大学・出口准教授は美濃焼産地に加え、山中漆器産地への調査にも参加する予定のため、各々残額が生じたと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
それぞれ平成29年度の実地調査とその準備に関わる費用に充当する予定である。
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