2017 Fiscal Year Research-status Report
医療・医薬・介護分野の機器・ロボットの国際競争力をもたらす技術・製品開発プロセス
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16K03893
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
亀岡 京子 東海大学, 政治経済学部, 教授 (80589614)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ユーザーイノベーション / 医療機器 / 手術支援ロボット / 生活支援ロボット / 新製品開発 / 医工連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究実績として主に挙げられるのは、これまでアプローチが極めて困難であった医療用ロボット(医療機器)メーカーおよび手術支援ロボットのメーカーにインタビューできたことである。加えて、手術支援ロボットを実際に臨床の現場で使用している医師にもインタビューを実施できた。これらの結果、医療機器・ロボットの研究・新製品開発プロセスにおいて、ユーザーがどのように関わり、イノベーションを起こしているのかをある程度確認することができた。このインタビュー調査より、2社の事例を分析する。 まず一社目の医療用ロボットともいえる医療機器の概要は次のとおりである。外資系大手エレクトロニクスメーカーが医師のアイディアに基づいて、腹腔鏡手術中の鉗子の動きを広い視野で見ることができるカメラの設計・製品化を行った。現在、薬事法承認を目指し、製品開発を進めている段階である。この事例は手術中に手元が見える範囲が狭いという問題があり、それを解決したいというニーズが医師たちに先に存在したものである。この問題解決にあたったメーカーと病院の医師たちを仲介したのが地方自治体の医工連携プロジェクトであった。補助金も新製品開発を進めるためのエンジンであった。 次の事例は米国の手術支援ロボットと日本の病院の医師への聞き取りによって得られた知見である。同社の手術支援ロボットは米国だけでなく日本でも世界的なシェアもトップである。同社はそもそも米国政府が湾岸戦争の際に遠隔医療を実施するために研究開発を進めてきた技術が基になっている。米国では医師が不足している地域での利用が推進されてきたが、日本では保険適用範囲が限定され手術支援ロボットを使った手術の治療費が高額であったため、教授クラスの技術のある医師しか利用できなかった。日米で同じロボットに対して、ユーザーによって使用に関する考え方が異なっていること等が分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は主として3件の聞き取り調査を実施できた。これらはアプローチが難しい取材先であったため、大きな成果であったと考えられる。そのうちの1件は,長年関心を持ち続けてきた米国本社の手術用ロボット企業の開発担当責任者のVice Presidentにテレビ会議システムにより直接話を聴けたことは非常に有意義であった。また,もう1件の聞き取り調査対象もユニークな医療機器を研究・製品開発していて,経営学分野の先行研究にはこの分野に触れたものがないため,こちらも貴重な話を聴けた。3つ目の聞き取り調査は手術支援ロボットを実際に使っている臨床医への聞き取り調査を実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は国内メーカーだけでなく、病院の医師や海外メーカーにも聞き取り調査を実施できたことは、研究自体を推進できる一因になったと考えられる。これから先は同業他社や生活支援ロボットのメーカーなどにも調査を進めたいと考えている。 また、調査だけでなく、論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
平成29年度に海外出張を行う予定であったが、家族の健康状態が悪く看病や介護にしばしば遠方まで通っていたこと、学内業務がいくつも重なり、思うように出張ができないといったことがあり、次年度使用額が生じてしまった。 平成30年度は海外出張や海外の学会に参加することを計画している。
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