2018 Fiscal Year Research-status Report
地方食料品製造業の高付加価値化と収益化の定量・定性研究
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16K03894
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
金間 大介 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (80435742)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アントレプレナーシップ / 国産紅茶 / 新市場創出 / 技術伝承 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の定量分析の結果を受けて、定性分析に重点を置いた。具体的には、近年になって新市場の創出がみられる国産紅茶に焦点を当て、その誕生から衰退、そして復活の軌跡を辿りつつ、現在の飲料ビジネスにおける紅茶の置かれた状況について考察を行った。さらに、国産紅茶生産の現場の状況をしっかりと踏まえた上で、今後の国産紅茶の辿るべき道筋を検討した。また、国産紅茶の市場開拓を1つのケースとしてメタから捉え,食品産業における新市場開拓について,イノベーション論的見地から考察を行った。 その結果、一旦は完全に消失した産業がここまで復活した要因として、一旦は消失した技術の復活と改良、当該技術の伝承、そしてそれを基にした新製品開発が鍵であったことがわかった。特に技術伝承は、先進的な国産紅茶の生産者たちが国内の製品の水準をあげるべく率先して行われたものであり、起業家精神を発揮した事例と言える。日本全国における紅茶生産者は2000年頃には数えるほどだったが,2008年には91軒,2016年には586軒にまで達している。これらの背景にはやや消極的な国内の緑茶産業の行き詰まりがあったが,一時の壊滅的な状況を経て復活し一定の市場を創出するまでに至っている。 さらに本研究では,独自に収集した国産紅茶の価格データを用いて,既存市場である緑茶との比較や主産地間の比較を行い,各地における生産過程の違いや新製品の価格づけにおける考察を行った。その結果、同じ国産紅茶生産者でも地域によって価格設定に差があることがわかった。例えば、現地調査を行った九州では,茶の主産地である静岡と異なり,多くの国産紅茶製品は緑茶よりも高価に設定しているケースが多かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事例分析のもととなるインタビューにはやや想定以上の時間と手間を要したが、論文執筆に至ってからは関係者の協力もあり、全体的におおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はいよいよ最終年度となるため、これまでの総括を意識しつつ、得られた成果の相互の関連性や、まだ分析しきれていないデータの分析に尽力する。
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