2016 Fiscal Year Research-status Report
わが国企業の特許戦略に関する実証研究-社長交代及び模倣戦略の観点から-
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16K03905
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
西村 陽一郎 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (10409914)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 特許戦略 / 模倣戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本企業の特許戦略の決定要因を計量実証分析することで、①前社長との社会的なコネクションに基づく社長交代後、特許戦略が大幅に変更されているのか、②新規参入分野に関する特許戦略の模倣行動が情報優位性または自他社間の競合関係の安定性によって説明がつくのかを検証することを目的とする。 本年度では、①に注力を行った。まず第1に、本研究テーマに関連する国内外の研究状況を把握した。よって、大量収集が終わっている先行文献群に最新の文献を追加した。同時に、先行研究を整理し、仮説を導出した。 さらに本年度では、簡単な統計分析を行った。社長交代後、前社長と社会的なコネクションが新社長の事業戦略に影響を及ぼしているのかを明らかにし、もし影響を及ぼしているのであれば、どの程度影響を及ぼしているのかを統計分析した。ここでいう事業戦略とは、売上高広告投資比率、売上高研究開発比率、売上高設備投資比率、在庫比率、販売管理費比率、自己資本比率といった主要な6つの指標を統合した戦略変数である。分析結果によれば、前社長との出身大学、出身都道府県、前職のコネクションが少なからず新社長の事業戦略に影響を及ぼしていることが明らかとなった。 本分析結果は、企業が特許戦略をドラスティックに変更するために社長交代といったイベントが必要なのか、そして、もし社長交代といったイベントが必要な場合に考慮しなければいけない要素として社会的なコネクションがどの程度考慮しなければいけないのかといった点を考察する際の手がかりになる。このような研究は、日本企業が特許戦略を策定する上で重要な経営的インプリケーションを我々に与えてくれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、本研究テーマに関連する国内外の研究状況を把握した。よって、大量収集が終わっている先行文献群に最新の文献を追加した。本年度では、社長交代後、前社長と社会的なコネクションが新社長の事業戦略に影響を及ぼしているのかを明らかにし、もし影響を及ぼしているのであれば、どの程度影響を及ぼしているのかを統計分析した。分析まで終了し、簡単な論文にまとめている点で本研究プロジェクトはおおむね順調に進展している。次年度は、社長交代後、前社長と社会的なコネクションが新社長の特許戦略に影響を及ぼしているのかを明らかにし、もし影響を及ぼしているのであれば、どの程度影響を及ぼしているのかを統計分析をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、研究計画通り、本年度は、導出された仮説を検証するため、被説明変数を構成する企業の特許データと、説明変数を構成する企業の財務データ・社長交代データを抽出・接合し、分析にすぐ利用することが可能な状態に整備する。また、前段階において整備された企業の特許データ及び財務データ・社長交代データを利用して、(a) 社会的なコネクションがある社長交代後、特許戦略が大幅に変更されているのか、(b) ビジネス関連発明の特許戦略が模倣行動または自他社間の競合関係の安定性によって説明ができるのかを統計分析する。 また、上記目標を達せするため、社会的コネクションを持つ社長交代と特許戦略については、社会的コネクションを持つ社長交代と特許戦略に関する統計分析を実施するにあたり、社会的コネクションと社長交代に関して既に共同研究を行っているカリフォルニア大学アーバイン校のMargarethe Wiersema先生及び一橋大学大学院国際企業戦略研究科の鈴木健嗣先生に今年5月に協力を仰ぎ、本研究について何度か助言を頂く予定である。
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