2016 Fiscal Year Research-status Report
日系海外子会社の探索型活動と二重の埋め込みのマネジメント―組織・人材の観点から―
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16K03906
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
山本 崇雄 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (30318761)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多国籍企業 / 海外子会社 / 探索的活動 / 日本企業 / 埋め込み |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の多国籍企業がいわゆる「二重の埋め込み(dual embeddedness)」、すなわち本社-海外子会社間、海外子会社-現地アクター間という2つの組織間関係をどのようにマネジメントしているのかについて、組織面・人材面から接近することにある。特に、本社-海外子会社間における組織間関係の埋め込みが過度に強すぎる場合、海外子会社の探索的活動の阻害要因となりうるが、それをどのように克服しているのかに焦点をあて、調査・分析を行っている。 3ヶ年の研究計画の1年目にあたる平成28年度の研究実績は以下の通りである。第1に、上述の問題意識に沿った複数の海外子会社へのヒアリング調査を2度にわたり実施した(タイに2回、ベトナムにて1回)。対象とした業界・産業は、日本本社やマザー工場との埋め込みが強くなされていると推察される自動車部品やその他製造といった領域である。また金融や教育、小売といったサービス業に属する海外子会社へのヒアリングも実施した。新しいヒアリング先の開拓についても、いくつかの企業について行うことができたと考えている。 第2に、関連する既存研究のレビューを実施した。探索的活動については、非常に広範な理論領域に関わるため、国際ビジネス(海外子会社イニシアティブなど)や国際起業家関連に焦点を絞り、関連研究の渉猟を行った。これについては、1年目の活動のみでは不十分であるので、組織論、ネットワーク論、イノベーション論など範囲を広げながら、2年目以降も引き続き実施していく予定である。 第3に、海外学会に参加し、かつそこでの学会報告を行った。その際、研究関心の近い研究者から有意義なサゼスチョンを頂くことができた。ネットワーキングも深めることができ、今後の研究戦略を検討する上でも重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究達成度については、やや順調に進んでいない箇所もあるものの、以下の理由から、おおむね順調に進展していると考えられる。 第1に、次年度の本格的なケーススタディへの協力企業が複数確定できたという点である。今後、同一企業の海外子会社の範囲をより拡大することを予定している。また、サービス業において、ユニークな探索的活動を行っている海外子会社があることがわかった。このうち、総合商社に関する研究の一部については、海外学会にて学会報告を実施した。そして、関連研究について『商経論叢』への投稿を行うことができた。 第2に、関連する文献のレビューについては、広範な理論領域が関係しているため、本年度は比較的研究の新しい国際ビジネス領域における探索的活動と二重の埋め込みに関する先行研究の渉猟を行った。国際起業家関連の先行研究についてもレビューを実施中であるが、これについては先行研究でも指摘されているように、数多くの研究が分散した形で存在し、混乱した状況が見られている。そのため、1年間のみで纏め切れていないのが現状であるが、2ヶ年も引き続き渉猟し、整理をすることを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
2ヶ年目にあたる平成29年度の研究の推進方策については、第1に前年度に引き続き、関連研究の渉猟を行う。本年度は、組織論のなかでも、制度化理論や政治的アプローチといったどちらかといえば非合理的な分析視角に基づく先行研究や、分析単位を集団や個人に焦点をあてた先行研究に重点を絞る計画である。 第2に、ヒアリング調査を昨年度に引き続き実行する。1回のヒアリング調査のみでは不十分な点も存在するため、同じ海外子会社にも継続的な調査をお願いしたり、また同じ多国籍企業の他の海外子会社にもヒアリング調査を行う予定である(特に、タイ、ベトナムなどについて)。また、取引先について過度に日系企業に依存する多国籍企業も散見されたが、そのうち現地企業に取引先を拡大しようとしている海外子会社にも調査を行うことを計画している。 第3に、海外の研究協力者からの助言を頂く機会を設ける予定である。これについては、海外学会へ参加する際やそうした研究協力者が日本訪問される際に、適宜打ち合わせの場をつくることを通じて、海外ジャーナルへの投稿を見据えた研究戦略についても議論を交わすことを計画している。そして、国内外の学会での報告や学術ジャーナルへの投稿についても、積極的に行っていく予定である。また、本研究に関連する研究について、専門書の一部の章として取り纏めることが決定しており、平成29年度(あるいは30年度)中には公刊する予定となっている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が9万円程度計上された理由としては、第1に予定していた図書や学術雑誌の購入を次年度に先送りしたという点、第2にヒアリング調査のテープ起こし向けの費用について、ヒアリング調査を実施したのが平成29年3月であったため、データ整理を終えることができず、次年度予算の執行分としたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の次年度使用額については、本研究テーマに関連する図書や学術雑誌の購入費とテープ起こし用の費用として2017年度に予算執行する計画であり、当初の予定通り執行できると考えている。
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