2016 Fiscal Year Research-status Report
顧客サービスの戦略的有効性をめぐるマーケティングの研究
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16K03926
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
今村 一真 茨城大学, 人文学部, 准教授 (60705846)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 相互作用 / プロセス / 成果 / カスタマー・アクティビティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、顧客サービスの戦略的有効性について、(1)サービス・マーケティング研究の対象を再検討することによって、また、(2)サービス・プロセスを定性的にとらえた検討を進めることによって、企業活動の成果との関係を明らかにすることを目的としている。本年度の課題は、実証研究の展開までを見通した分析視角の理論的精緻化と、サービスの展開プロセスに関する調査分析の実施であった。 前者については、先行研究の詳細なレビューから得られた知見をもとに、新たな分析視角の設定が可能になった。従来の主たるサービス・マーケティングが重視したのは、サービス・エンカウンターにおけるサービス品質の重視と向上だといえるが、本研究はこの限界を指摘するとともに、問題点を克服するために、独自の分析視角を設定した。これによって、新たな視点で主体間の相互作用に注目する方法が用意されたほか、従来にない顧客サービスの戦略的有効性の検討が可能になる。この研究成果について、すでに学会報告を終えており、査読雑誌への投稿も決まった。 後者については、企業活動を幅広くフィールド調査して分析対象を特定する。今年度は、小売企業を複数採り上げて、顧客との相互作用をどのように形成しているのか、実践の場ではどのような取り組みが推進されているのかを解明した。それによれば、企業は顧客のアクティビティ(CA)への関与を目的とし、顧客と接点があった後の(購買に留まらない消費の前や後(使用)段階における)CAへの影響を考慮した関与が志向されている。具体的には、事後における様々なCAの支援とそのためのサービス行為として明確に意識されていることもあれば、新たなサービスの実施によってCAの最適化を促進させようとするものもある。つまり、顧客にとってより良い生活を推進するうえで実効性の高い意義を、サービスの成果として捉えることができるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より計画していた2つの研究課題に対して、ほぼ予定通りに研究が進められ、相応の結果が得られたことから、今年度の進捗状況を、おおむね順調に進展していると判断した。 しかし、企業が顧客接点を獲得してサービスの展開プロセスを重視し、成果を獲得することによってリレーションシップが意識されることと、CAに変化が生じることは、一義的にとらえることが難しい。つまり、企業が成果として蓄積する要素だけでは、CAの変化を捉えることができない。したがって、CAの変化は企業活動の成果とともに採り上げるべきであり、定性的な調査分析を行ううえで欠かせない視点だといえる。そのため、CAに関しては、先行研究レビューを継続する必要があり、本研究の分析視角に踏まえることが求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
顧客アクティビティへの注目は、決して古いものではない。議論が豊富化するのは数年前からであり、本研究はこうした新しい動向に対応しながら検討を進めていく必要がある。妥当性の高い検討にするための研究レビューが求められる。つまり、計画に基づいた研究の遂行が求められるというものの、レビューすべき先行研究は増え、常にフィードバックしなければならない。そこで、次年度以降の研究においても、当初の計画に含まれていない先行研究レビューを追加しながら研究を進めていくこととする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は(1)資料整理要員確保の遅れ、(2)インタビュー調査実施の先送りによる。(1)については、予定していた人材の都合により採用が遅れ、人員確保が間に合わなかった。(2)については、インタビュー調査の実施順序を変更したため、先送りになった調査先が複数あるからである。これらの事情から、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
16年度の繰越分は、17年度に主として旅費として充当し、具体的にはインタビュー調査の実施のために活用する。このほか、研究補助者だけでなく複数の資料整理要員を確保するなどして、謝金の使用を円滑に進めていく。
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Research Products
(5 results)