2018 Fiscal Year Research-status Report
「オフショア化されたサービスに対して日本の顧客が有する態度と心情」に関する研究
Project/Area Number |
16K03929
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 龍史 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (60445872)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オフショア化 / コールサービスセンター / 日本人顧客の態度 / 日本人顧客の心情 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「オフショア化されたコールサービスセンターからのサービスを受ける日本の顧客が、どういった態度(attitude)や心情(sentiment)を形成するか」という問題意識に基づいて、それを測定するための尺度を開発することにある。主な取り組みとしては、(1)文献レビューや探索的事例研究等を通して「オフショア化されたサービスに対する顧客の態度や心情」の構成概念・構成要素を洗い出し、(2)一般的に認められた尺度開発手続きに従いながら、構成概念の測定尺度を開発する。 当年度においては、昨年度までに構築した「オフショア化されたコールサービスセンターに対する顧客の心情」の背後にある概念モデルを洗練させることを目的として、定性的比較分析(QCA)を用いた探索的研究を行った。 具体的にはまず、オフショア化されたコールサービスセンターへ問い合わせをした経験のある20名ほどの顧客を探して半構造化インタビューを行い、その回答結果を事例としてまとめた。次に、それらに対して集合論を用いた事例間比較を行う定性的比較分析(QCA)を行い、上記の「心情」を形成する諸要因のうち決定的な要因を導出した。 そうした上で、上記「心情」の構成要素および要素間の関係について、概念モデルの構築を通じた検討(昨年度までに取り組んできた内容)と、定性的比較分析を通じた検討(当年度に取り組んだ内容)を比較し、最後(今年度)に行う「心情」の測定尺度づくりのための準備を終えた。 当年度に行った研究から、概念モデルの構築においては重要度の高さを客観的に見出せなかった要因「距離に対する(顧客側の)注意」が決定的に重要であるようだということが分かった。ここまでの成果について論文にまとめ、現在は国際ジャーナルに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画と比べて進捗がやや遅れている理由は2つある。 1つは、日本の顧客の場合には、従来のコールサービスセンターのオフショア化に関する研究(欧米諸国における顧客を対象としたもの)とは大きく異なる要因が重要だということが(当初の読み以上に)見つかったということである。これが「日本の」顧客において独特のものか、あるいは海外在住の日本人顧客にとっても共通したものなのかを検討する必要性が出てきた。ただし、そこまで研究するためには時間および資金的な拡張が必要となるため、可能な範囲内で検討することとした。 2つは、当年度に校務等の負担が著しく増加したため、研究に充てられる時間が大幅に減少してしまったことである。とりわけ授業や委員会会議の増加だけでなく、新潟県内の諸企業や諸団体への移動等が多く求められたため、まとまった時間が確保できないという問題が大きく発生してしまった。
こうした事情により、当初の計画から遅れが出てしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」にあるとおり、2つの理由から当初の研究計画から遅れが出てしまっている。このギャップを埋めるための方策として、測定尺度の構築および(実証研究による)確認という2段階に分ける方法をやや変更し、複数の方法を通じた測定尺度の構築を行うこととする。すでにこの方策は進めており、当年度に定性的比較分析を通じて再度、構築済みのモデルを確認・洗練させてきたことがそれである。また、とりわけ作業的な側面の強い仕事に関しては、補助員を積極的に活用するなどしてプロジェクトを効率的に進められるように再度工夫をしたい。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」にあるとおり、2つの理由(当初の計画には含まれていなかった研究の展開、および校務負担の著しい増加)により、当初の研究計画から遅れが出てしまっている。そのため、研究期間を一年延長させてもらい、その期間を通じて主目的である「測定尺度の構築」を達成する。主な使用計画としては、本調査のための調査実施費用、分析作業における補助員への謝金、国際ジャーナルへの投稿にかかる費用、および学会発表のための出張費を想定している。延長した期間で確実に研究目的を達成するための計画は細かく立てており、すでに実行段階にも入っている。
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