2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03934
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
兒山 真也 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (30305677)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ロジスティクス(物流) / 外部委託(アウトソーシング) |
Outline of Annual Research Achievements |
ロジスティクスの外部委託の拡大傾向が続いている。その目的はいまだ低コスト指向が強いとはいえ、高度化・機能強化・小口化対応・グローバル化対応・CSR/ESGといった要請も拡大要因である。本研究ではロジスティクスの外部委託が、荷主企業の主要な経営課題の達成及び環境経営に対して、いかに効果的であるか、またどのような経路で効果を発揮するかを明らかにすることを目的としている。 平成28年度は研究実施計画に従い、第一に自動車排ガス規制の経緯と成果及び課題を整理した。ディーゼル貨物車を中心とした輸送機器の低公害化は、ロジスティクス事業者による環境経営の前提であり、その成果を正しく把握しておくことは必須である。 第二にロジスティクスの外部委託に関するデータを収集し、現状の定量的な把握に努めた。これらに関する入手可能な公開データは多くないが、代理指標となり得るデータを含め、公開データにより検証可能なのはどこまでか把握しておくことは重要である。 第三に東証一部・東証二部・ジャスダックに上場する全製造業者(1,439社)を対象とした、ロジスティクスの外部委託及び環境経営に関するアンケートデータの整理・分析を行った。またこのデータを用いた共分散構造分析により、ロジスティクスの外部委託の効果の検証を試みた。これは木村 (2014) をはじめとした先行研究を修正し、外部委託が効率化をもたらすと同時に環境経営力を高めるという経路の検証を企図したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第一に自動車排ガス規制の経緯と成果及び課題の整理に関しては、自動車公害対策の展開やその特徴、到達段階を把握した。いわゆる日本版マスキー法のような華々しい成果があったものの、激甚型公害の時代から順調に対策が進んだものではなく規制の停滞もみられたこと、規制強化において自治体が大きな役割を果たしたことなどが確認された。しかしロジスティクス事業者の行動及び主体的役割については十分に解明できたとはいえない。またこのテーマに関しては早期にとりまとめ、分担執筆書籍の一章とする計画であったが、出版計画自体が遅れていることもあり実現していない。 第二にロジスティクスの外部委託に関するデータの収集・整理に関しては一定の進捗があった。しかし既存データにより現状を明瞭に把握することの困難性が確認されたとの感がある。営業用トラックのシェア上昇傾向、自家物流費の構成比の低下傾向といった、基本的データの把握は行った。しかし各指標の含意や指標間の関係について、詳細な検討には至っていない。また物流施設に関するデータの収集は難航しており、代表的なロジスティクス事業者による公表資料からのアプローチも目途が立っていない。結果として新規性のある事実の確認には結びついていない。 第三に、独自の企業アンケートによるデータの整理・分析については、荷主による価格への要求がきわめて強いことが確認されるなど、一定の結果は得られた。また共分散構造分析では、ロジスティクスの外部委託からコスト優位性に至る直接経路や、委託先とのシナジーを意味する間接経路が有意となった。しかし環境経営に関する変数の有意性が確認できておらず、結果として形のある成果としての公表に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に自動車排ガス規制の経緯と成果及び課題について、すでに得られた知見に加え、ロジスティクス事業者の行動及び主体的役割について調査の上、分担執筆書籍の一章となる原稿を作成する。 第二にロジスティクスの外部委託に関係するデータについて、各指標の含意や指標間の関係について検討することを通じ、外部委託が競争優位や環境経営上の優位性をもたらしているとの示唆を得ることをめざす。また物流施設に関するデータの収集方針についても引き続き検討する。 第三に独自の企業アンケートによるデータを用いた共分散構造分析を引き続き試みる。ロジスティクスの外部委託の環境経営上の優位性を示すことをめざし、当面は変数やモデルの選択を試行するが、場合によっては分析手法の変更も検討する。 第四にロジスティクスの外部委託、環境経営、競争優位に関するケーススタディを行う。手法や対象業種は未定であるが、主として荷主側を想定し、今後の検討をふまえてロジスティクス事業者側を対象とする可能性もある。
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Causes of Carryover |
自動車排ガス規制の経緯と成果及び課題の整理と、ロジスティクス事業者の環境対応に関する検証の一部を取りまとめ、分担執筆書籍の一章とする計画であったが、出版計画自体が遅れていることもあり実現していない。英語による出版を計画しているため、外注費(英文校閲もしくは英訳)の執行が遅れている。またこの執行分を確実に残しておくため、研究資料等の購入を一部留保している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記出版計画の進捗に伴い、外注費(英文校閲もしくは英訳)として執行する計画である。またこの執行後の残額が確定次第、購入を留保していた研究資料等を入手する計画である。
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