2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03940
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小野 晃典 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (20296742)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カスタマイゼーション・システム / レコメンデーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本事業にとって二年目にあたる本年度においては、本事業のテーマである「カスタマイゼーション」の批判的検討に際して、カスタマイゼーション・システムにおける企業推奨品に関する最新かつ唯一の先行研究群を展開してきたHildebrandらが提唱したモデルの対抗モデルを構築した。彼らは、興味深いことに、たとえランダムに製品属性を組み合わせて作った製品であっても、企業がそれを推奨品として提示するだけで、消費者は、企業推奨品が存在しない場合より高い水準の満足をカスタマイゼーションに対して知覚すると主張した。それに対して、本事業において、取組者は、例えばNikeがNikeID.comでカスタマイズ・スニーカーを販売するだけでなく、Nike.comで既製品をも販売しているという実例にみられるように、カスタマイズ製品には既製品が別途存在するということを大前提とし、顧客がカスタマイゼーションを行う過程においてそれに合わせて次々とよりよい推奨品を更新して提示するシステムが、高い顧客満足をもたらすという帰結を導出するモデルを構築した。構築したモデルに対する実証分析は首尾よく成功し、それをまとめた英文論文は、二年に一度開催されるカスタマイゼーション学会の査読に通過した。一方、30年前に立ち上げられてNikeIDのような世界有数のカスタマイゼーション・システムに影響を及ぼしたパナソニックサイクルのカスタマイゼーション・システムに関して、パナソニックサイクルの協力を得て、インタビューを行うことに成功した。そして、世界が注目したパナソニックのカスタマイゼーション・システムの興隆について、さらには、それ以降、言及されることのなかった衰退について、そして、競合他社によって進化したプロセスについて、日本語論文にまとめ、学術誌『マーケティング・ジャーナル』に掲載されることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の項で報告させていただいたとおり、最終目標であった概念的研究・実証的研究を行い、その結果を英文論文にまとめて、国際学会に投稿して採択されるまでに至ることができた。また、機会を得て、カスタマイゼーション・システムに関する事例研究を行うこともできた。それゆえ、「当初の計画以上に進展している」と自己評価しても差し支えないと考えたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本事業は、すでに目標達成に相当する研究成果を挙げるに至り、さらに、貴重な事例を調査することもできた。しかし、研究成果に関する英文表現を巧妙化し、公刊するための作業には、さらなる努力の余地がある。この点について、三年目も、精力的に研究を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
少額の「次年度使用額」が生じた理由は、当初の思惑より低予算で購入できたことに伴う誤差である。次年度において、それを消耗品費に充当して、よりよい研究活動に注力したい。
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