2018 Fiscal Year Research-status Report
小売システムの海外移転プロセス―日系小売企業のグローバル戦略モデル構築を目指して
Project/Area Number |
16K03956
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Research Institution | Hollywood Graduate School of Beauty Business |
Principal Investigator |
今井 利絵 ハリウッド大学院大学, ハリウッド大学院大学(ビューティビジネス研究科), 教授 (70298131)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小売技術 / 国際移転 / 埋め込み |
Outline of Annual Research Achievements |
上海に進出した日系ドラッグストアにおいて、日本式ドラッグストアフォーマットを構成する小売技術が、どのようにそしてどのような理由で移転されたのかを明らかにするため、実地調査、インタビュー調査、二次資料による調査を実施した。その結果、各小売技術の移転戦略が明らかになり、またそこに作用した埋め込み要因が明らかになった。具体的には、企業ごとに「埋め込み対象の分類」「被埋め込み領域の分類」「埋め込み要因の分類」を行い、小売技術移転のメカニズムを整理した。 さらに、(1)領域(小売技術)ごとに埋め込みの影響力は異なること(制約的要因:Constrain、制定的要因:Constitutive)、(2)埋め込みの影響は企業ごとに異なる(企業ごとに異なる技術移転が行われている)こと、(3)本国への埋め込みの影響は、派遣者を通じて生じていること(したがって進出の初期段階の埋め込み影響が重要)が指摘できた。すなわち、小売技術の選定、企業戦略、派遣者マネジメントの重要性が明らかになった。 またその状況は台湾に進出した日系ドラッグストアでも同様に見て取ることができた。 そこで、日系小売業のアジア進出において、どのような戦略が高いパフォーマンスにつながるのかを調査するため、また対象業態を拡大するため、質問票による調査を実施すべく設問設計を行った。質問票により各社の小売技術の移転方法とその採用方式を類型化し、パフォーマンス(店舗数、出店テンポ、売上高、操業年数)との関係性を分析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初インタビューおよび実地調査を通じたモデル構築を想定していたが、学会発表での指摘や論文査読を通じて、事例に基づくモデルの妥当性を裏付けるデータの必要性が想起された。また日系小売企業の海外進出も増加・多様化しており、量的調査の実行可能性も高まったため、質問票調査を実施するよう方向転換を図った。さらに二人の幼児の子育て 時期と重なり、思うように出張や研究の時間が取れなかったことも遅延理由の一つである。 したがって本研究の目的のうち現在は、(1)日系小売企業の顧客接点技術の生成プロセスと海外市場への移転プロセスを明らかにする、(2)日系小売企業の小売システム(組織構造、付加価値創造システム、小売業務システム)、(3)生成プロセスと海外市場への移転プロセスを明らかにする、の3点に関して、上海に進出した日系ドラッグストアのケースにおいて明らかになった状況にある。今後、量的調査を追加することにより、(4)日系小売企業の海外出店を促進するための戦略モデルを構築することを推進していく。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の具体的な目的のうちの最後にあたる、(4)日系小売企業の海外出店を促進するための戦略モデルを構築するという目的のため、これまで明らかになった「埋め込み対象の分類」「被埋め込み領域の分類」「埋め込み要因の分類」をもとに、量的調査(質問票調査)を実施する。現在では質問設計を行い、その内容を学会発表(全国大会)にて報告している。そこでの指摘を解消しつつ、テスト調査を実施する段階に入っている。 対象はアジアに進出した日系小売業である。「海外進出企業総覧(国別編) 2018年版 (週刊東洋経済臨増 DBシリーズ)」より選定を行っている。 今後の課題は調査期間の短縮にある。そのため、調査依頼を紙面で行い、アンケート自体はWebを通じて回答していただく方法を採る予定である。
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Causes of Carryover |
まず、研究の遅延理由により、上海・台湾以外での実地調査・インタビュー調査の回数が予定に満たなかったことが挙げられる。計画では4日間×2回を実施予定であったが、2日間×1回に留まった。これに伴い、通訳や研究補助の費用も使用しなかった。また研究成果公開のためのホームページの公開が未完であり、この費用(ホームページ制作およびサーバ・ドメイン費)も次年度使用額に含まれる。 次年度使用額は質問票調査のための諸経費および補完的インタビュー調査に利用する。
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Research Products
(4 results)