2016 Fiscal Year Research-status Report
日本の国際ロジスティクス力のグローバル比較実証分析
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16K03964
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
宮下 國生 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (60030714)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際ロジスティクス力 / ビジネスモデル構築力 / インフラ力 / VMI / JIT(ジャストインタイム) / 海運物流 / 空運物流 / モーダルシフト |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの分析では、2001-2011年における中国・香港・台湾・韓国・タイ・マレーシア・シンガポールのアジア7か国・地域の国際ロジスティクス力を、日本のこれらの各国・地域からの11年に亘る海運輸入貿易・物流のプールデータを用いて推定し、その際 「ビジネスモデル構築力」を、通関行動と貨物取扱行動が連動しない国際VMI(Vendor Managed Inventory)の普及の程度によって、また「インフラ力」を、日本のGDPを基準値(分母)とするGDP比率の機能の程度によって測定して、各パワーの国・地域別弾性値を求めた。 28 年度は、ここに日本のポジションを組み入れて上記の分析結果の意義を向上させることである。そこで日本の輸出貿易・物流データの方に注目して、アジア7か国・地域が日本の国際ロジスティクス力を評価するという、上記の輸入物流モデルとは逆方向に機能するモデルを構築した。その理由は、輸入物流モデルが真に現実の事情に適合しておれば、輸出物流モデルでは、日本のインフラ力はアジアの目標値(分子)として機能し、またビジネスモデルはタイムラグのないJIT(Just in Time)を主体とするであろうからである。輸出物流モデルの推定結果はこの輸出行動仮説が有意に機能することを実証した。 同時にこの推定結果より得られた日本の国際ロジスティクス力がいかなるポジションにあるのかを、すでに明らかにしたアジア7か国・地域との比較によって抽出できる。それによれば日本のロジスティクス力は8か国・地域の中でシンガポールに次ぐ2位にあり、以下3~7位は韓国、香港、台湾、中国、マレーシア、タイの順にある。 なお以上に加えて今年度は、空運物流ロジスティクス力の比較分析の布石として、日本の対米輸出を中心に海空モーダルシフト行動から海空ロジスティクスサイクルを導出するための実証分析も試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績を研究実施計画と比較すれば、まず輸入物流における分析を、輸出物流分析に拡大して、日本のポジションを明らかにするという実施計画を実行して、研究の推進に道筋をつけることができた。そこでは、輸入分析と輸出分析を含む行動仮説の合理的整合性も実証できており、進捗状況は順調に推移しているといえる。 輸出分析は、当初の予定では2001~2015年の期間で行う予定であったが、実際には輸入分析と同様の2011年までを推定期間として実施した。しかし分析方法の整合性を比較実証する上ではむしろ推定期間を一致させるべきであるので問題はないと考えている。 ただ推定結果を詳細に見れば、世界銀行の膨大なアンケート調査結果に比べて、本分析では韓国のポジションが過大に高評価されている可能性が高いことが分かった。つまり韓国の強力なトランシップ活動が本来の同国のロジスティクス力に歪みを加えているように見える。ロジスティクス活動がグローバルに展開されていることを考えれば、アジア市場での分析を世界規模に拡大して、その中で個々のポジションを改めて検証する必要がある。 そこで、当年度では、2015年までに推定期間を延長するための海運貿易・物流データ収集作業は並行して行うとともに、その対象を、アジアでは従来の7か国地域にインドネシアを加え、さらに米国、カナダにEUを加えた11か国・地域にまで拡大して、次年度の研究の推進に備えている。ただし発展途上国として加えたインドネシアの物流データの公表が2003年以降に限定されるために、11か国・地域のプールデータの推定期間もまた2003-2015年に統一する。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、上記のアジア8か国、米国、カナダ及びEUの11か国・地域の13年間に亘るサンプル数143の海上貿易・物流のプールデータを用いて、グローバル規模で各国・地域の国際ロジスティクス力を比較実証して、日本のパワーのポジションを明らかにする。 グローバルな空間的広がりを対象とする本年度の分析では、アジア単一地域を取り扱った前年度の研究とは異なり、貿易関数にロジスティクスに関わる重要な空間変数(例えば航海日数で捉えた距離要因やトランシップ行動などの当該国・地域の物流の特徴)を組み入れて、それぞれの国・地域の空間的偏りを調整しなければならない。そのうえで、貿易関数の逆関数として、推定されるべきロジスティクス関数を導くという手順を踏む必要がある。 また推定のためのモデルの構築に当たっては、Chowテストと同じ機能を果たす追加変数法が応用できるように考慮したうえで、推定された国・地域別の説明変数の係数値に構造的差異があるにかどうかを検証しなければならない。その際、当然、構造的差異がゼロである計測の基準国を定める必要があるが、ここでは中国を選択する。中国はOECD諸国と発展途上国との境目に位置するので、中立的機能を果たすと期待されるからである。またアジア地域に限定した考察では、他の国・地域に比して貿易・物流量ともに異常値に近いレベルにあった中国の存在は分析上の大きなネックでもあったが、米国とEU が加わるグローバル規模の分析ではこの問題も解消する。以上の方針の下ですでに実際の推定作業に着手しており、期待したレベルに近い推定結果が得られつつある。 なお30年度に予定する航空物流における国際ロジスティクス力のグローバル比較実証分析に向けてのデータ収集や海運物流との連携分析についても、上記の分析と並行して予備的作業を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
入荷待ちの文献が支払期限内に到着しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
改めて発注状況を確認して、対応する。
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Research Products
(4 results)