2017 Fiscal Year Research-status Report
フランス流通小売業にみる競争環境の変化と低コスト戦略に関する実証分析
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16K03970
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
森脇 丈子 流通科学大学, 人間社会学部, 准教授 (10353210)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 流通小売業 / フランス / “Drive” / bioブーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、流通専門誌を中心に最新の情報収集を行いながらフランスの流通小売業が直面する課題とそれに合わせた企業側の取り組みの整理を行った。流通小売業の一部には「利益がでないレベルでの安売り」をしているとの指摘もある。各流通小売グループは絶え間ないプロモーションの促進とCMなどにお金をかけて自社のマージンを削りながら競争している。インターネット経由で注文した商品を自分の車で受け取りに行く“Drive”も引き続き設置数は増えており、各企業グループは注文サイトの操作性とロジスティックの改善に多額の投資を行っている。bio商品の取扱いに関しては、NBメーカーもPBを生産する小売業もbio商品の開発・販売を強化している。このブームの背景には消費者の食の安全に対する関心の高まり、食を通じての健康志向の増大、一定の利幅の見込める商品としてのbio商品の位置づけなどがある。 ヒアリングでは、大手流通小売業グループのA店、冷食販売の日本企業のフランス営業部で実施した。A店では、bio商品の扱い、顧客の消費者動向、アジア商品の売れ行き、店舗改修の効果、“Drive”の運営上での変化を中心に聞き取りを行った。“Drive”の倉庫を自動化することが常に効率的であるとは限らない状況などについても説明を受けることができた。 後者の企業では、フランスの冷食市場動向とこの企業のフランスおよび欧州市場の戦略についてヒアリングを行った。この企業は、2017年に現地企業から冷食部門を切り離して買収した。この買収により冷凍食品製造能力のある現地企業を自社に取り込んだ点、この買収した企業がすでに冷食市場で一定の商品知名度を持っている点で、新たな商品開発や販路の拡大が可能となる条件を獲得した。現状はこの子会社の統合過程にあるため、買収の具体的成果はまだない。だがこの会社にとっての欧州市場戦略の大転換点にあるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画年度2年目に予定していたことは、おおむね順調に進展している。 なお、ヒアリングに関しては、大手流通小売業に納入するメーカーからの聞き取り数を増やすつもりでいたが、困難な状況が続いている。アポイントをとるための連絡をいれた企業各社からは「反応なし(メールの返信もない)」「断りのメール」、電話連絡でも断られる、といった形での返事しかもらえていない。こうした企業側の反応(ヒアリングの実施が極めて難しいこと)は、フランスでの小売業調査の場合には当初から想定していたものであるが、予想通りの壁がある。 最終年度にも、引き続きヒアリングを受け入れてくれる企業探しを継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
計画最終年度(3年目)では、フランスの流通小売業(食品小売業)をとりまく競争環境の実態について、専門書や専門誌の情報も参考にしながら、まとめの作業をおこなう。またその際には、計画年度2年目に実施したヒアリングの内容で公表可能なものに限定して、事例として紹介できるよう準備をしていく。 これらについては、学会発表ならびに公表論文の執筆の形で成果を出していきたい。学会発表は最終年度内にエントリーする予定であるが、公表論文に関しては最終年度終了後の発行になると思われる。 また、ヒアリングのアポイント取りを継続して行っていく。スーパーとの取引額が大規模な大手の納入業者だけではなく、小規模(零細を含む)の生産組織や生産農家などにもヒアリングの対象を広げながら、ヒアリング実施数を増やしていきたい。大手の納入業者に関しては、アポイントメントがとても取りにくいことが2年目の実践で明らかとなっているため、ヒアリングの対象を拡大しながら対応していきたい。 上記の取り組みを通して、フランスの小売市場における納入業者と流通小売業との関係をより具体的に分析できる材料を整えていく。
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Causes of Carryover |
計画年度2年目の年度後半から、勤務校の在外研究の機会を得てフランスで生活することができるようになった。そのため、通常の調査でかかる費用のうち「旅費」「滞在費」が不要となったため、計画予算に余りが生じた。 計画最終年度(3年目)には、専門誌等書籍の購入ならびにヒアリングの実施回数の増加を予定している。ヒアリングの実施により「通訳費用」が発生するものと思われる。また、在外研究は8月で終了するため、その後の現地調査には日本-フランス間の「旅費」と「滞在費」の支出が必要となる。さらに、帰国後には本研究に関連する学会報告を予定している(エントリーはこれから)ため、学会出席の旅費等も必要となる。そのため、次年度の研究計画で予算はすべて消化することになると思われる。
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